自分の口臭に気づいたら、すぐさま改善・消臭したいと思うのが当然ですよね?だからと言って、やみくもにお金をかけて消臭グッズやサプリメントを買いあさったあげく、結局、効果が出ない……などという経験はありませんか?
そんなことになってしまう前に、まずは自分の口臭がなぜ起きてしまっているのかの原因を考えてみましょう。
このページをご覧になっているみなさんは、きっとご自身、もしくは近しい方の口臭に「アンモニアのような臭い」を感じていらっしゃることと思います。
そこで、このページでは、「なぜアンモニア臭がする口臭が発生するのか?」「アンモニア臭がする口臭を発生させる口腔内および内臓のトラブル」「アンモニア臭がする口臭の改善・消臭方法」などについて、ご説明したいと思います。
コンテンツ
なぜアンモニア臭がする口臭が発生するのか?
「アンンモニア臭」と聞いて、皆さんがまず思い浮かべるものはなんですか?ツンと鼻をつくような、尿の臭いではないでしょうか?そして信じがたいことに、時としてこのアンモニア臭が口臭として現れる場合があります。
ただし、ここで注意していただきたいのは、アンモニア臭のする口臭の背景には何らかの病気が隠れている可能性があるということ。以下に挙げる3つが、アンモニア臭がする口臭を発生させる原因と考えられる病気の事例です。
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アンモニア臭がする口臭を発生させる口腔内および内臓のトラブル
では、なぜ上記の1~3のような病気に罹患すると、アンモニア臭がする口臭が発生してしまうのでしょうか?
1 歯周病(歯槽膿漏)
アンモニア臭と聞いて真っ先に連想されるのは「尿の臭い」ですが、実はアンモニア成分はさまざまなものに含まれており、その一つに歯に付着する歯垢や歯石が挙げられます。
歯磨きでの磨き残しや、歯と歯のあいだに詰まった汚れや食べカス、また古くなって剥がれ落ちた口腔内の粘膜など、さまざまなものが細菌の温床である歯垢(プラーク)のもととなります。歯垢の段階であれば、念入りな歯磨きやオーラルケアを行うことで取り除くことが可能ですが、これを放置したままにしておくと歯石へと変化。歯科医院で器具を使ってクリーニングしなければ除去しづらくなり、歯周病(歯槽膿漏)を引き起こす原因と成ります。
歯周病に罹患すると歯茎が炎症を起こし、その炎症した部分からツンと鼻をつく尿のようなアンモニア臭をはじめ、腐った卵のような硫化水素の臭いや甘酸っぱいアセトンの臭いなどさまざまな臭いが混じり合い、悪臭を放ちます。これらが呼気として口臭を発生させるため、相当の悪臭になることは言うに及びません。
歯周病はこのような悪臭ともいうべき口臭を発生させるだけでなく、放置しておくと歯の土台の部分にある歯槽骨(しそうこつ)をも溶かし、歯茎が下がってしまう原因となります。すると、歯茎が歯を支えることができなくなり、最終的には抜け落ちてしまうという最悪の事態にもなりかねないのです。
そんなことになる前に、できるだけ早く歯科医院を受診し、適切な治療を受けるように心がけましょう。
アンモニア臭を口臭として発生させる内臓のメカニズムとは?
「2 肝臓機能の低下(肝硬変etc.)」と「腎臓機能の低下(尿毒症etc.)」についてご説明する前に、ここでは、なぜ肝臓もしくは腎臓が、アンモニア臭を口臭として発生させる内臓となってしまうのか?について、そのメカニズムをご説明したいと思います。
そもそもアンモニアは、食べ物に含まれるタンパク質が腸内の善玉菌によって分解される際に発生する物質です。しかしながらこのアンモニアは、人の身体にとっては非常に有害なものであるため、通常であればまずは肝臓に運ばれ、肝臓の中にあるオルニチンと反応することで人体には害を及ぼすことのない尿素へと作り変えられるのです。また、その尿素は腎臓へと運び込まれてさらに分解され、人の身体に必要な成分を濾し取った後に尿となり、体外へと排出されるのです。
このアンモニアが尿へと変えられる過程において、肝臓もしくは腎臓のうちのいずれかの内臓機能が低下もしくは異常をきたすと、アンモニアや尿素をうまく分解することができなくなり、それらの成分は体内に残留することになります。そうして身体の中に残ってしまったアンモニア成分は血液中に取り込まれ、体内を巡ることになるのです。
体内を巡ったアンモニア成分が肺にまで到達すると、呼気とともに体外に放出されることになります。つまり、これがアンモニア臭のする口臭が発生するメカニズムなのです。
2 肝臓機能の低下(肝硬変etc.)
本来、肝臓という臓器の役割は、「体内の代謝を促す」「脳のエネルギー源となるブドウ糖(グリコーゲン)を蓄えておく」「消化吸収の働きを助ける胆汁を作り出す」などの働きをすることです。
また一方で、体内に取り込まれたアルコールなどを中和するほか、疲労の原因物質である乳酸を糖に変えるなど、解毒作用を行う働きも兼ね備えています。そして、この解毒作用の一環として、先にも記載したように、食べ物を消化する過程で発生した私たちの身体にとって有害なアンモニアを分解し、無害な尿素へと変えるのです。
ただし、機能が低下したり、何らかの疾患を抱えている肝臓はうまく働くことができず、アンモニアをきちんんと分解できなくなってしまいます。すると、分解されなかったアンモニアは血液に取り込まれ、体内を巡って肺に取り込まれて呼気と混じることで口臭となったり、汗となって体外に放出されて、体臭となったりするのです。
このような場合、以下のようなことが原因で肝臓機能が低下していると考えられます。
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上記の原因の中でも、特に継続的なアルコールの過度な摂取は、肝細胞を破壊する原因になりかねません。また、肝細胞が破壊されることは、「肝不全」「肝硬変」「肝臓がん」など、重篤な疾病を引き起こす原因ともなり得ます。
実際、これらの病気に罹患すると、その特徴的な症状の一つとして「肝性口臭」と呼ばれるアンモニア臭を伴う口臭を発生させる場合が多くなります。
しかし、肝臓は「沈黙の臓器」として知られ、何らかの病気に罹患しても自覚症状を感じづらいため、本人も気づかないままに病気が進行してしまうことが多いのです。まずは、肝臓疾患を予防するには、過度なアルコールの摂取や喫煙を避けることが必要です。また、それと同時に血液検査などの定期検診を行うことにより、早期発見を心がけることが大切です。
そうすることで、たとえ肝臓疾患が発見されても早期に治療を受けることができ、口臭対策とともに、病気の悪化を防ぐことができるはずです。
3 腎臓機能の低下(尿毒症etc.)
腎臓という臓器の役割は、「血圧・体液の量などの調整を行う」「血液を作り出すための司令を出す」「体外に老廃物を排出する」などの働きを行うことです。このため、腎臓の機能が低下すると、肝臓機能の低下と同様に、アンモニアをきちんと分解して正常な尿に変えることができなくなるため、残留したアンモニアが体内を巡って、口臭や体臭となって体外に放出されることになります。
腎臓の機能低下の原因としては、「慢性腎臓病」「尿毒症」「腎不全」などが考えられます。ただし、慢性腎臓病は、ほとんど自覚症状が現れない病気として知られています。まずは、腎臓病を予防する方法として、偏った食生活や運動不足など、不摂生な生活を避けることが重要と言えるでしょう。
また、慢性腎臓病の次の段階である尿毒症に罹患すると、本来なら体外に排出されるべき老廃物や尿が含む毒物をうまく処理できなくなり、これらが体内に蓄積されるようになります。その結果、「食欲不振」・「吐き気」・「頭痛」・「倦怠感」などの症状が見られるようになり、さらに症状が悪化すると「呼吸困難」や「昏睡状態」にまで陥ることがあると言われています。
このように慢性腎臓病は、アンモニア臭のする口臭の発生をはじめ、身体に異変を感じる頃にはかなり病気が進行している可能性のある恐ろしい病気です。これを避けるには、やはり血液検査や尿検査などの定期検診を受けることが大切です。
可能な限り、早期に腎臓疾患を発見することが、腎臓疾患によって発生するアンモニア臭を伴う口臭の改善・消臭につながるだけでなく、病気そのものを早期に改善できる最善策と言えるのです。
アンモニア臭がする口臭の改善・消臭方法
歯周病(歯槽膿漏)、肝臓病、腎臓病などが原因で発生するアンモニア臭を伴う口臭を改善・消臭するには、何よりもまず、それぞれの疾患の治療を行うことが先決です。ただし、いずれの疾患も、治療には時間を要します。ですから、それらの口臭をケアするためには、治療と並行して日々の口臭ケア対策を行うことが大切になってきます。
まずは基本的なこととして、医師からの指示をしっかりと守りながら、規則正しい生活やバランスのとれた食事など、身体に良い生活習慣を心がけましょう。
また、病気治療と同一と言えるほどの根本的な口臭改善には至らないものの、以下のような方法でアンモニア臭がする口臭をマスキングすることも、エチケットとしては必要不可欠です。そうすることでスメルハラスメントなどを避け、周囲の人たちとの円滑な人間関係を持続するための一つの有効な手段となるでしょう。
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最後に
アンモニア臭を発生させる口臭を感じた場合、歯周病、肝臓病、腎臓病などの疾病に罹患しているリスクがあることをご確認いただけたでしょうか?
ただし、日本口腔外科学会では
病的口臭の90%以上は口の中にその原因があり、歯周病、むし歯(う蝕)、歯垢(しこう)「歯の周りに付く細菌の固まり」、歯石、舌苔(ぜったい)「舌の表面に付くコケ状の細菌の固まり」、唾液の減少、義歯(入れ歯)の清掃不良などがあげられます。
出典元:日本口腔外科学会 口腔外科相談室
(最終閲覧日:2019.05.24)
としており、これによれば、肝臓病や腎臓病など、病気が原因で発生する口臭の可能性は10%のみということになります。つまり、病的口臭が発生する確率はそう高いものではないのです。
ただし、先にも記載したとおり、肝臓、腎臓のいずれも、何らかの病気に罹患しても自覚症状が出にくい臓器であるため、注意を怠ると病気が進行してしまうリスクが高いのです。これを避けるためには、それらの疾病の原因とも言われる不摂生な生活を改め、規則正しい生活とバランスのとれた食生活を心がけること。また一方で、尿検査や血液検査などの定期検診を受けることがポイントになります。
皆さん、それぞれの病気の予防・早期発見に取り組むとともに、アンモニア臭を発生させる口臭を感じた際には、病気の治療と並行して日々の口臭ケア対策を行うことで、快適な生活を送れるようにがんばりましょう。