近頃、「ザリガニ臭い口臭」を改善したい、消したい、というお悩みよく耳にすることがあります。でも、そもそもこの「ザリガニ臭がする口臭」っていったいどんなニオイなのでしょうか?
口臭が「ドブ臭い」あるいは「ウンコ臭い」など、近頃では口臭のニオイの種類を言い表すのに、ある意味、過激とも思える表現が使われることがありますよね?
何もそこまで言わなくても……と思う反面、口臭はそれほど周囲の人の迷惑になりうる行為もしくは、悪癖に近いものなのかもしれません。
実際、近頃ではさまざまな嫌がらせやいじめを意味するハラスメントの一つとして、「スメルハラスメント」と呼ばれるニオイに関するハラスメントも数えられるほど。そして何より怖いのは、自分の鼻は自分のニオイに慣れてしまっているため、自分自身の口臭には気づきにくいということです。
スメルハラスメントは香水や柔軟剤、あるいは整髪料など、個々人の好みによってその評価が分かれるものから、体臭や口臭など、その内容や種類にかかわらず周囲の人のほどんどが不快に思うものなど、さまざまなものが挙げられます。
中でも「口が臭う(口が臭い=クサイ)」と書く口臭は、「口臭」という言葉そのものにすでにネガティブな意味が込められているわけです。その証拠に、「良いニオイがする口臭」とは言いませんよね?つまり口臭とは、その口臭がどのようなニオイがするものなのかに関係なく、「口臭」と表現される時点で、すでにあらゆる人にとって不快なものである、ということです。
しかも、その口臭のニオイの表現が先ほど触れた「ドブ臭い口臭」や「ウンコ臭い口臭」などと過激になればなるほど、その口臭の悪臭としての強度も強い、と考えるのが妥当でしょう。
それにしても、「ドブ臭」や「便臭」、もしくは「生ゴミのようなニオイ」や「卵が腐ったようなニオイ」などはまだ想像がつくとして、最近よく耳にする「ザリガニ臭い口臭」とは、いったいどのようなものなのでしょうか?
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ザリガニ臭い口臭が起こる原因とそのニオイの元とは?
突然ですが、皆さん、生きたザリガニのニオイを直接、嗅いだことはありますか?実際のところ、そういう機会ってなかなかありませんよね?
確かにザリガニは通常、水田・用水路・池など、流れのゆるい浅瀬の泥底などの環境に生息しているため、「泥臭い」ようなイメージがあります。でも本来、ザリガニそのものは、「臭くない」のです。
では、なぜ「ザリガニ臭」などと、クサイ口臭の代表的なニオイのように言われているのかといえば、それはザリガニを飼ったことがある人が、気づかぬうちにその飼育環境を劣悪にしてしまっていたため、と考えられます。
そもそもザリガニは食事マナーが悪く、食べ物を食べ散らかしてしまいます。そのうえ、排泄量も多いため、水を汚染しやすいのです。それでも、こまめに水を入れ替えてあげれば良いのですが、おそらくザリガニを飼ったことのある経験のある方は、そのほとんどが子供時代のことだったのではないでしょうか?
だとすれば、ザリガニを飼っているとはいえ、学校や宿題や他の遊びにも忙しく、ザリガニの水槽の水換えまでは、なかなか気が回らなかったはず?
そうこうしているうちに、ザリガニの水槽の中の食べ物や排泄物、また水そのものが腐敗してアンモニアなどの有害物質が蓄積することになり、なんとも言えないクサイ腐敗臭を発生させていたことでしょう。そしてそれが、ザリガニ自体が発生させているニオイとして、記憶されているのです。
つまり、ザリガニ臭い口臭とは、このザリガニを飼っていた水槽の環境をそのまま劣悪化した口腔内の環境に置き換えた場合、そこに発生している口臭であると言えるのです。
口腔内でも、ザリガニの水槽と同じことが起こりうる
私たちの口の中でも、食べ物を食べた後の食べカスが除去されないままに残留すれば、その食べカスは口腔内に生息する細菌のエサとなります。そして、その細菌がエサを分解して増殖する際に発生させるガスが、口臭の原因となるのです。
また一方で、食べ物のカスは歯の垢(あか)ともいうべき歯垢や歯石として蓄積されます。すると、歯周炎や歯周病に罹患しやすくなり、歯と歯肉の境目にある溝が深くなって歯周ポケットができてしまいます。すると、それらの歯周ポケットは細菌の温床となるため、歯茎が炎症を起こして膿が発生するなどし、さらに口臭が強くなってしまうのです。
さらに、環境が悪化した口腔内の場合、舌苔(ぜったい)と呼ばれる舌の上に広がる白いコケ状のヨゴレが厚くなっている可能性が考えられます。舌苔は口腔内の古くなって剥がれ落ちた粘膜や、食べカスなどが蓄積したタンパク質を含むヨゴレです。これらのタンパク質はやはり口腔内に生息する細菌のエサとなるため、舌苔も口臭を発生させる原因の一つとなりうるのです。
なお、これらの口腔内のトラブルがもとで生じる口臭の原因となるガスには3種類あり、それぞれが以下のようなニオイを発生させます。
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中でも、メチルカプタンは口臭の強さと深い関係があるとされており、口臭を計測するうえでの重要な指標になっているガスです。
そして、この「魚が腐ったようなニオイ」を発生させるメチルカプタンこそが、腐った水槽のようなニオイである「ザリガニ臭」の原因と考えられるのです。
ザリガニ臭がする口臭を改善・消臭する方法とは?
では、ザリガニ臭がする口臭を改善・消臭するには、いったいどうすれば良いのでしょうか?
ザリガニ臭がする口臭は先にも触れたとおり、口腔内の環境の悪化によって発生します。ですから、ここでは口腔内の環境を良好にするための方法を考えてみましょう。
口腔内の環境を清浄化するには
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などの方法が考えられます。
1. きちんと歯を磨く
口腔内の細菌を除去するには、やはり毎日の歯磨き習慣は欠かせません。もっともオーソドックスな方法とも言えますが、ただ漫然とおざなりに磨くのではなく、「隅々まで丁寧に、きちんと磨くこと」を意識しながら歯を磨くことで、歯磨きの効果はグッと違ってくるのです。
そもそも成人の場合は、たとえ毎日丁寧に歯を磨く人の口腔内であっても、平均して500種類以上、数にして1000億個以上の細菌が生息していると言われています。丁寧に歯磨きをしていてさえも、細菌の数がこんなにも膨大なわけですから、これがおざなりな磨き方しかしていない人の口腔内となると、想像するのも恐ろしいほどの細菌群の巣窟になってしまうわけです。
では、「隅々まで丁寧に、きちんと歯を磨く」場合、具体的にはどのようなことを心がければよいのでしょうか?
例えば、歯ブラシの使い方を横方向にだけでなく、縦方向に立てるようにして使いながら1本、1本丁寧に磨いたり、歯と歯肉の間の溝にも歯ブラシがしっかりと届くように磨く。これも一つの大切な方法ですね。
また、丁寧に歯を磨く時の一つの目安としてぜひ実践していただきたいのが、「10~15分の時間をかけて、鏡を見ながら歯を磨く」ということです。そして、せっかく時間をかけて丁寧に歯を磨くなら、使用する歯磨き粉にもこだわりたいところ。
ちなみに、ある調査によれば、歯を磨く時間のうちでもっとも多いのは1~3分の45%。次いで3~5分未満の35%と続き、10~15分以上と回答した人は、全体の約5%ほどしかいなかったそうです。
私は実際、この方法を実践しているのですが、特に慣れないうちは10~15分の間ずっと歯を磨き続けるというのは、実際にやってみると結構、長く感じるものです。つまり、必然的にそれだけ丁寧に歯を磨くことにつながるわけですね。
またこの場合、「鏡を見ながら磨く」ということもとても大切。自分では右足にも左足にも同じように体重をかけて歩いているつもりでも、どうしたわけか、いつも必ず左足の内側の靴底から減っていく……。こんな歩き方の癖と同じように、自分では気づいていないものの、人にはそれぞれ歯の磨き方に癖があって、だいたいいつも同じようなところに磨き残しがあるものなのです。
正直、私にもそんな癖があり、いつも同じところに磨き残しがあったようで、時折、歯肉に若干のうっ血が見られる箇所がありました。でも、この「鏡を見ながら、丁寧に歯を磨く」という方法によって、解消することができたのです。
ただし、できるだけ食べカスや雑菌を除去するために効果的に歯を磨くには、歯ブラシの使い方にある程度の技術がいるのもまた事実。毎日10~15分という時間を確保するのも、なかなか大変なことかもしれません。そんな時は、口腔内の磨き残しを極力減らすため、歯ブラシの本数や形状にこだわり抜いて創られた歯ブラシを使ってみるもの一つの方法です。
以下の「ころころ歯ブラシ」は、なんと20代の頃から歯周病に悩まされていた男性自らが開発し、歯周病対策に効果を得たという商品です。正直、通常の歯ブラシと比べると高価ですが、歯磨き粉を使用する必要がないこと、交換の目安が1ヵ月ということ、さらには利用者の満足度やリピート率などを考えれば、決して高い買い物ではないようです。
2. マウスウォッシュを使用する
「1. きちんと歯を磨く」の中でお伝えしたとおり、歯を磨くことは口腔内を清浄化するためには欠くことのできない習慣です。
実際、歯科医の中には、日に2~3回、3分ずつ歯を磨くよりも、1日1回(特に就寝前がオススメ)、10~15分の時間をかけて丁寧に歯を磨く方が、虫歯や歯周炎・歯周病予防に効果的であるとする方々も多くいます。
ただし、それでもなお、歯と歯のスキ間や奥歯の裏側、歯と歯茎の間にある溝など、歯ブラシだけではなかなか取りきれない食べカスや雑菌は、どうしても口腔内に残ってしまいます。ですから、歯磨きの後はマウスウォッシュをセットで使用するようにすると、より効果的な口腔ケアにつながります。
だたし、出勤やお出かけ前で時間が確保しづらい朝や慌ただしいランチタイムなどは、口の中に残った食べカスや雑菌を除去するために、マウスウォッシュを使用したうがいをするだけでも口腔内の雑菌を抑制する効果がありますよ。
なお、うがいをする場合はその「うがいの方法」にまで気を配ることで、より効果的な口腔内の清浄化が期待できます。以下では、さまざまなうがいの方法をご紹介しています。TPOに応じて、ぜひ実践してみませんか?
3. 舌苔をケアする
雑菌の温床となって、口臭を発生させる原因になる舌苔をケアすることは、口臭を改善・消臭・予防するにはとても大切なことです。ただし、気をつけなければならないのは、舌苔のケアには、細心の注意が必要ということ。
間違った方法での舌苔ケアは、かえって口臭を悪化させる原因になります。以下のような舌苔除去用のスプレー式マウスウォッシュや専用ジェル、もしくは舌ブラシを使って正しくケアすることを強くおすすめします。
なお、舌苔についてより詳しく知りたい方は、以下のページをご参照くださいね。
4. 唾液の分泌を促す
口腔内が乾燥してしまうと、口臭の原因となる細菌が増殖します。ですから、口臭の原因菌を減らすためには、唾液の分泌量をアップさせることが大切。そして、唾液の分泌を促すのにもっとも意外で効果的な方法が、「こまめに水分補給をする」ということなのです。
そもそも人の身体の50~75%は水分で作られています。つまり水分は、人の身体に欠くことのできないものということ。これは裏を返せば、人の身体の構成要素の大部分を占める水分は、人が健康に生きるためにもとても重要なものだということですよね?
この際、口臭の改善・消臭・予防だけでなく、より健康な身体を手に入れるためにも、日々補給する水分の中身にもこだわってみませんか?
なお、唾液の分泌量は口臭と深い関係があるだけでなく、健康寿命をも左右すると言われています。さまざまな方法で唾液の分泌量をアップして、ぜひ口臭の改善・消臭だけでなく、身体全体のバランスを整えましょう。
最後に
このページでは「ザリガニ臭い口臭」がなぜ起こるのかの理由から、それを改善・予防するための方法をご紹介しました。4種類すべての方法を並行して行うのが理想ではありますが、いずれかひとつの方法を実践するだけでも、きっと効果が期待できるはずです。
悪化した口腔環境の清浄化は、水分補給など、ちょっとした心かけや行動からでもスタートできます。「ザリガニ臭い口臭」にお悩みの方は、ぜひ実践してみてくださいね。
なお、口臭の原因の一つである歯周病は、厚生労働省が平成29年度に発表した「歯科疾患実態調査」によれば、歯周病が進行した状態の深さ4mm以上の歯周ポケットがある人が、14~24歳ですでに約18%、25~34歳で約32%、35歳以上に至っては、その約8割の人が歯肉からの出血などを含め、何らかの歯周病の症状を有しているとのこと。つまり、歯周病によって発生する口臭のリスクを、ほどんどの人が持っているということなのです。
ですから、歯周病を正しく理解してそれに対する対策を取ることは、口臭を防ぐだけでなく、歯と歯茎、ひいては身体全体の健康を守るためにも、実に重要なことなのです。
なお、歯周病についてのより詳しい内容は、こちらのページからご覧いただけます。ぜひ、ご参照くださいね。