口臭の中には、ストレスがもとで起こるものがあります。そのような口臭を改善・消すためには、まずはストレスと口臭の関係を知ることが大切です。
そもそも口臭には大きく分けて4つの種類があります。
詳しくは原因を突き止めて、効率的に口臭を消すページをご覧ください。
ここではその中の一つである「心理的口臭」、つまり精神不安やストレスがもとで起こる口臭について見ていくことにしましょう。
ストレスを感じる理由には、人それぞれにさまざまな理由があるはずです。中には、過去に体験した辛い経験がトラウマになっていて、同じ経験をするたびに強いストレスを感じる方もいるかもしれません。
そこで、ここではわかりやすい一般的な例として「大勢の人の前で話をしなければならない場面」や「テレビや映画などで、ドキドキ、ハラハラするスリルに満ちた場面を見た時」など、緊張感が最高潮に達する状況を想像してみてください。
いかがでしょうか?この記事を読んでくださっている皆さんの中にも、「口がカラカラに渇く」などの感覚を想像した方がいらっしゃるのではないでしょうか?
つまり、強い緊張感がもとで感じるストレスは、眠っている時と同じように副交感神経が働くことにより、「口腔内が乾く」状態になるのです。
そして、この精神不安やストレスがもとで起こる口臭は、実は「唾液の分泌量と質」に深く関わっているのです。
唾液には3種類の粘度がある
そもそも唾液は血液を原料に、唾液を作る工場としての役割を担う唾液腺で作られています。唾液腺には「耳下腺(じかせん)」「顎下腺(がっかせん)」「舌下腺(ぜっかせん」)と呼ばれる3種類の大唾液腺および 、「舌」「唇」「頬」「口蓋(こうがい)と呼ばれる、口腔と鼻腔を分離している口腔内の上壁部分」をはじめ、口腔内のさまざまな箇所に無数に存在する小唾液腺 があります。ただし、すべての唾液量の約95%は、大唾液腺から分泌されるものであると言われています。
また、唾液の成分は95.5%が水分であり、本来は無臭なものです。ただし、その粘度には3種類あり、耳下腺からは「サラサラ成分の唾液」が、舌下腺からは「ネネバネバ成分の唾液」が、顎下腺からは「その中間程度の粘度の唾液」がそれぞれに分泌されているのです。
唾液が担うさまざまな役割
ここではまず、唾液が担っているさまざまな役割について見てみましょう。
<1 口腔内を潤す>
滑舌をよくしてスムーズに言葉を発することを可能にすると同時に、口腔内の粘膜が傷つくことを防ぎます。
<2 食べ物を食べやすく、飲み込みやすくする>
食べ物を食べる際、唾液の水分やその成分が「硬い食べ物を柔らかくする」「口腔内で食べ物をまとめやすくする」などの働きをすることで、嚥下しやすくします。
<3 消化を助ける>
唾液に含まれる成分「アミラーゼ」などの酵素が食べ物の中のデンプン質を分解し、体内に吸収しやすい物質に変えることにより消化を助けます。
<4 味覚を舌に感知させる>
食べ物を口腔内で咀嚼した際、その食べ物を「味蕾(みらい)」と呼ばれる器官に運び、味覚を感知させるための仲介役を担います。
<5 口腔内を自浄する>
唾液が持つ水分が歯や口腔内に着いた細菌・食べカスを浄化。ひいては口臭の元となる虫歯や歯周病に罹患するリスクを低下させます。
<6 口腔内を抗菌する>
唾液の成分である「リゾチーム」「ラクトフェリン」などの物質が持つ抗菌作用が、口腔内の細菌の増殖を抑制し、死滅させます。
<7 歯を保護する>
唾液の構成成分の一つであるタンパク質が歯の表面に薄い膜を張ることで、虫歯の原因菌によってつくられる酸から歯を保護します。
<8 pHを緩衝する>
唾液はその成分により、口腔内のpH(ペーハー=液体の水素イオン濃度のこと。その液体が「酸性」もしくは「アルカリ性」のどちらなのかを表す尺度として用いられる)が酸性に傾くのを正常値に保つための働きを担い、虫歯になるリスクを低下させます。
<9 再石灰化作用>
唾液の構成成分である「カルシウム」や「リン酸」の働きにより、ごく初期の虫歯を再生させます。
ストレスを感じると唾液が減少。そして口臭が発生する
先ほど、口腔内に分泌される唾液の粘度には3種類あることに触れました。そして、人がストレスを感じた場合には、ネバネバとした粘度の高い唾液が多く分泌されるようになり、唾液の分泌量自体も約3割も低下すると言われています。
これは唾液の分泌量をつかさどる自律神経のうち、ストレスによって交感神経が優位になると「ネネバネバ成分の唾液」を分泌する舌下腺の働きが強くなると同時に、「サラサラ成分の唾液」を分泌する耳下腺の働きが弱くなってしまうため。
そもそも唾液は先に述べたような数多くの役割を持つと同時に、口腔内をさまざまな角度から中和して良い状態に保つ働きを担っています。しかし、ストレスがかかることによって、この能力が低下。さらに唾液の分泌量の低下によって乾燥した口腔内は、酸素がない状態である「嫌気性」の環境を好む細菌が一気に増殖しやすい環境となってしまいます。
すると、「虫歯の穴」や歯と歯肉の隙間の「歯周ポケット」もしくは「歯垢」に潜む細菌が、口腔内の食べカスを溶かすことによって卵や魚の内臓が腐ったような悪臭を発生させやすくなり、これが口臭のもととなるのです。
「ストレスと口臭の関係」を物語る興味深い実験結果
以下は、大学生71名に対して、「試験前」「試験日」「試験後」の3回、「唾液の分泌量」ならびに「口臭原因物質の濃度」をチェックした結果表です。
大学生71名の「ストレスと口臭」について
ストレスと口臭
(Queirozほか Eur J Oral Sci 2002年、一部改変)
ストレスと口臭の関係性を100%証明するのは困難ですが、この結果では、見事に「試験日当日は唾液分泌量が減少」し、また同時に「口臭原因物質の濃度が上昇」していました。つまり、唾液の分泌量が減少することによって、口臭が強くなっていたのです。
これは大学生にとって「試験がいかに大きなストレスであるか」ということおよび、そのストレスによって「唾液の分泌量が減少すると同時に、口臭が強くなる」ということを証明したと結果であると言えるのではないでしょうか?
なお、ストレスが原因で起こる口臭を改善・消す方法などについてはこちらをご参照ください。