ドライマウスを正しく理解することは、口臭を改善・消すために大切な知識の一つです。ここではドライマウスについて、詳しく見ていきましょう。
ドライマウスとは、一言で言うなら「口腔内が乾燥する病気」です。だたし、この「口腔内の乾燥」は緊張や興奮などによって生じる一時的な口腔内の渇きとは異なり、「水を飲む」などの水分補給を行ったとしても簡単に治るものではありません。「口腔内の強い渇き」を常に感じる状態が3カ月以上続く症状をドライマウスと呼ぶのです。
具体的には、通常、健康な成人であれば、1日に平均で約1~1.5リットル(500mLのペットボトルにして、約2~3本分)の唾液が分泌されると言われていますが、この唾液の分泌が何らかの原因で低下することにより、口腔内が乾燥してしまう状態のことを指します。
ドライマウスは別名「口腔乾燥症」とも呼ばれ、男性よりも女性に多い病気と言われています。口腔内の潤いは唾液腺から唾液が分泌されることによって保たれているため、唾液の分泌量が低下した場合には、乾燥によるネバつきなど口腔内に何らかの不快感が現れます。また、症状が強い場合には、口腔内に「ただれ」や「ひび割れ」による出血を引き起こす場合もあり、時には疼くような痛みを伴うことすらあります。ただし、こうした症状をはじめとするドライマウスの自覚症状が現れる頃には、口腔内の唾液の分泌量が通常の半分程度になってしまっている可能性が高いものと考えられます。
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ドライマウスになる原因とは?
では、なぜドライマウスになってしまうのか? その原因は「日々の生活習慣」によるものと、「ドライマウスを併発する疾患」によるものの2種類が考えられます。
<日々の生活習慣が原因の場合>
1 咀嚼する必要のない食品が多い食習慣
昨今の食生活においては「咀嚼する」、つまり「食べ物をよく噛んで飲み込むこと」の必要のない柔らかい食品が増えています。一方で、唾液は食べ物をよく咀嚼し、顎や舌の筋肉を充分に動かすことによって分泌されやすくなるのです。ですから、噛み応えのある食べ物を食べる機会が減った食習慣においては、顎や舌の筋肉も衰える傾向にあり、このため唾液の分泌量も減少。結果として、口腔内が乾燥してしまうのです。
2 仕事や人間関係によるストレスの多い日常生活
そもそも唾液は心と身体がリラックスしている時には分泌されやすく、緊張およびストレス状態においては分泌されにくいものです。その場合、緊張感やストレスが緩和されたり解消されれば、唾液の分泌量も通常通りに戻ります。ただし、逆にこの緊張感やストレスが持続してしまうと、口腔内の渇きが慢性化してしまうこともあるのです。
3 アルコール摂取量の過多
アルコールを摂取すると、そのアルコールを身体の外に排出しようとする働きが起こり、発汗作用や利尿作用が高まります。それはつまり、「身体が脱水状態になる」ということを意味するのです。このためアルコール摂取の過多、つまり「お酒の飲み過ぎ」という状態が続くと、体内の水分バランスが崩れてしまい、唾液の分泌量までもが低下。これが原因となって、ドライマウスを引き起こすこともあるのです。
4 口輪筋(こうりんきん)や全身の筋力の低下
年齢を重ねると身体全体だけでなく、口の周辺の筋肉である口輪筋の筋力も低下します。そして口輪筋の筋力が衰えると、知らず識らずのうちに唇をしっかりと閉じていることが困難になります。
例えば睡眠中に口が開いてしまったり、日常生活においても口呼吸をすることが増えるのです。口呼吸が増えると唾液が蒸発しやすくなり、口腔内が潤いを失って乾燥するようになることでドライマウスを引き起こす可能性が高くなります。
また、身体全体の筋力が低下すると、猫背で顎が前に突き出るような姿勢を誘発します。すると、自然と空気の温度や湿度を調整して身体の中に取り入れると同時に、口腔内の乾燥を防ぐ働きをしてくれている鼻呼吸とは逆の働きをする口呼吸になってしまい、ドライマウスをも招いてしまうのです。
5 日常的に服用している薬の副作用
例えば、花粉症の治療として用いられている「抗ヒスタミン薬」。何らかの身体の痛みを抑制するための「鎮痛剤」。激しい感情の高ぶりや落ち込みを抑えるための「抗鬱薬」や「向精神薬」。血圧を下げるために用いる「降圧薬」。体内の余剰水分を排出させるための「利尿薬」など、その副作用が原因でドライマウスを引き起こす薬は、一般に知られているだけでも実に多種多様存在します。
薬局で処方された薬の説明書の注意事項などの欄に、副作用として「口渇(こうかつ)」という記載がある場合には、それが口腔内を乾燥させる副作用の可能性があることを意味しています。
高齢者の方々にドライマウスに罹患している傾向が多く見られるのは、服用している薬の数や種類が多いためと考えられます。ドライマウスの症状がひどい場合には、本来、その薬を服用している原因となっている疾患の状況を見ながら、医師に別の薬の処方を相談してみるなどの対策を取ることをオススメします。
<ドライマウスを併発する疾患が原因の場合>
1 「糖尿病」に罹患した場合
糖尿病に罹患すると、膵臓で作られるインスリンの分泌量が低下して慢性的に血糖値が高くなります。つまり、身体が自ら血糖値をコントロールできない状態になり、糖を含む大量の尿が体外に排出されることで体内が脱水状態となるため、ドライマウスを引き起こすことにつながるのです。
2 「脳出血」「脳梗塞」「くも膜下出血」に罹患した場合
これらの脳卒中に罹患すると、急激な激しい頭痛や吐き気を感じたり、重篤な場合には意識を失って命に危険が及ぶケースがあります。また時には、手足や半身に麻痺症状が現れたり、視覚や聴覚などの異常が見られることも。なおかつ、口の周りの筋肉まで麻痺することもあり、この場合には唾液の分泌量が低下してドライマウスを引き起こす可能性があります。
3 「シェーグレン症候群」に罹患した場合
シェーグレン症候群とは、膠原(こうげん)病の一種であり、本来なら身体を守るための免疫機能が正常に働かなくなってしまった場合に起こる疾患です。シェーグレン症候群に罹患すると、その症状の一つとして「口」「目」「皮膚」など全身に乾燥が見られることがあり、中でも「口」の乾燥を感じる場合には、ドライマウスを発症している場合が多くあります。
4 「更年期障害」の場合
一般的には45~55歳頃の閉経の時期をはさむ前後10年間に、女性ホルモンの分泌量が激減することや仕事や家庭環境などにまつわる心理的な要因が複雑に関与することによって、心と身体にさまざまな不調をきたすのが更年期障害です。ただし、更年期障害の症状は実に個人差が激しく、「精神神経系」「血管運動神経系」「皮膚・分泌系」など全身のあらゆる箇所にさまざまな形で現れます。それらの中で、皮膚や粘膜の乾燥の一つとして現れるのがドライマウスなのです。
なお、ドライマウスを予防して口臭を改善、消すための方法は以下のページをご参照ください。