年齢を重ねるにつれて自分の口臭が気になりはじめ、「何、この口臭?絶対消さなきゃ!」と思うことが増えた……。40代前後のアラフォー世代にもなってくると、そんな方たちも多いのではないでしょうか?
そもそも口臭の原因として大きな割合を占める「歯周病」について、厚生労働省「歯科疾患実態調査(平成23年度版)」では、すでに20代の人たちの約7割に歯周病の症状がみられ、それが30代になると約8割にまで増えるという結果を得ています。
20代、30代という若い世代でさえそうなのですから、40代前後以降になって食生活が変化したり、歯の衰えを修復するためのブリッジ、義歯、インプラントなどといった補綴物(ほてつぶつ)を用いることが多くなれば、口腔内における歯周病の原因菌がより繁殖しやすい環境になります。そのため口臭が発生しやすくなるのも、当然のことと言えるでしょう。
けれど、年齢を重ねたことを理由に口臭が強くなっても許されるかといえば、そんなことはありませんよね?いくつになっても、口臭がスメルハラスメントとして周囲の人たちの迷惑になることに変わりはないのです。
特に昨今、日本の統計調査においては65歳以上とされていた高齢者の年齢を一挙に10歳引き上げて75歳以上に見直すと同時に、年齢を重ねても働いて収入を得ることを奨励する動きが出てきています。
実際そうなれば、いくつになっても人とのコミュニケーションは仕事をするうえで非常に重要なことですから、口臭ケアを怠たるわけにはいきませんよね?
そこで今回は、加齢は本当に口臭の原因になるのか?また、加齢による口臭を撃退するには、どのような方法があるのか?などについて、ご紹介させていただきます。
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口臭は加齢が原因で悪化する?
年を重ねるにつれて口臭がキツクなるように感じるのは、果たして本当に「加齢」そのものが原因になっているのでしょうか?
日本老年歯科医学会によって行われた臨床報告には、以下の内容が明記されています。
高齢歯科患者における口腔不快症状の実態より抜粋
口腔不快症状は,加齢と共にその出現頻度が増加すると言われている。70歳以上の高齢者を対象に調査した下山らの報告では,男性2.7%,女性10.0%であった。また,高齢者の約40%が口腔乾燥感とその関連症状を自覚し,特に全身疾患に対する薬物投与を受けている老年の女性に多いと言われている。
高齢者の口臭については,口臭は加齢による影響を受けず,むしろ加齢に伴う口腔環境の変化によるものが大きいといわれている。このことは,舌苔および歯周ポケットは硫黄化合物濃度に影響しているという報告からも明らかである。今回の調査では,39.7%の者が口臭を気にしていたが,高齢者は口臭が生じやすい口腔環境であるためではないかと推測された。
全身疾患との関係
口腔乾燥感唾液腺機能低下と口腔乾燥症の原因となる全身疾患としては,尿崩症・糖尿病・自律神経系異常などが挙げられる。今回の調査では,何らかの全身疾患,その中でも循環器疾患を有する者には口腔乾燥感を訴える者が多く認められた。循環器疾患の治療薬としては,降圧薬,特にCa拮抗薬が処方されていることが多かった。降圧薬は副作用として口渇をもたらすものが多いことから,降圧薬による副作用のために口腔乾燥感が生じている可能性も考えられた。
老年歯科医学16巻/最終閲覧日:2019.06.26
つまり、上記の臨床報告によれば、高齢者のうち約4割の人が口腔内の乾燥を自覚しており、その原因となる全身疾患のうち、特に循環器系の疾患を持つ人にその症状が現れやすいとしています。またその理由として、循環器疾患の治療薬として処方されることの多い降圧薬による副作用が指摘されています。
実際、高齢になれば若い世代に比べて、降圧剤を服用する可能性は高まるはずです。そのため口腔内が乾燥しやすくなり、その状態を好んで繁殖する口臭のもととなるガスを生み出す細菌類の繁殖が活発化。結果として口臭が発生しやすくなると同時に、増殖した歯周病菌によって歯周病に罹患したり、歯周病の病状が進んだりする傾向にあるということが言えるのではないでしょうか?
そして、そう言った状況はまさに、臨床報告の中にある「口臭は加齢による影響を受けず、むしろ加齢に伴う口腔環境の変化によるものが大きい」ということを表しているものと思われます。
加齢による免疫力の低下でも口臭が発生する?
年齢を重ねると髪が白くなったり、寝つきや目覚めの悪さを感じやすくなります。また、若い世代に比べて疲れやすくなったり、風邪や感染症にかかりやすくなったりもします。そして、一般的に言うこれら老化現象の原因には、免疫力の低下が大きく関係していると考えられています。
この免疫力の低下を口腔内の環境に当てはめて考えてみると、高齢になるほど歯が衰え、虫歯や歯周病に罹患する人の割合が増えてくる理由も自然と見えてきます。なぜなら、そもそも風邪や感染症に罹患するのはそれらのウィルスに感染することが原因ですが、口腔内にも虫歯や歯周病の原因となるさまざまな細菌群が生息しており、その細菌が増殖することによって虫歯や歯周病に罹患する確率が高まるからです。
つまり、年齢を重ねるほど虫歯や歯周病に罹患しやすくなるのは、それらの疾患の原因となる細菌を抑制する「免疫力」が低下しているため、口腔内の細菌が増殖しやすい状態になっていることが、その理由の一つと言えるのです。
虫歯や歯周病に罹患すれば、結果として口臭が発生する確率も高くなります。このようして加齢による免疫力の低下が、口臭の発生にも大きく影響を与えていると考えられるのです。
加齢が原因の口臭を撃退する7つの法則
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1 こまめな水分補給を心がける
こまめな水分補給をすることは、水を口に含むことが自体が唾液腺の刺激になり、唾液の分泌を促してくれます。また同時に、唾液のもととなる水分を身体の中に蓄えることができるのです。
充分な唾液が分泌されれば唾液が細菌類を洗い流し、口腔内を浄化してくれます。また、なにより唾液には、虫歯菌のほか口臭のもととなるガスを発生させる原因となる歯周病菌など、口腔内の悪玉菌を殺菌する免疫物質が含まれています。つまり、唾液はさまざまな面から、口臭の発生を抑制するうえでのキーポイントとなっているのです。
口臭の発生を防ぐうえで、それほど重要な唾液の分泌を「こまめな水分補給を心がける」という実に簡単な方法だけで促すことができるのですから、取り組まない手はありませんよね?
ただし、この場合気をつけたいのは、ジュースをはじめとする糖分を含む飲み物を避けること。糖分は虫歯の罹患リスクをアップするだけでなく、口腔内の細菌類のエサとなって増殖を活性化し、口臭のもととなるガスを発生させる手助けとなってしまう可能性があるからです。
また、口臭を防ぐ成分が含まれている無糖の緑茶や紅茶などを飲むのも、水分補給の一つの方法です。
2 1日3回、バランスのとれた食事で腸内細菌を増やす
口臭を防ぐにあたって、口腔内の環境を整えることはとても重要なことです。しかし、実は腸内環境を整備することも口臭を予防するためには実に大切なことなのです。なぜなら腸内環境が悪化して悪玉菌が増えると、腸内で腐敗臭を放つガスが発生します。そして、それらが身体の中を巡って肺に到達し、呼気と混じって口臭として体外に放出されてしまうためです。
これを防ぐには腸内を整えることができる、バランスのとれた食事をとることがオススメ。また、腸内環境を整えることで自ずと口臭予防をサポートしてくれるサプリメントを利用するのもいいですね。
また、口臭予防や口臭改善を目指すなら、食事は朝・昼・晩の1日3回、きちんと取るのがベスト。なぜなら、まず第一に、食事を抜いてしまうと食事から得られる水分補給を逃すことになります。また第二に、飲食物を食べたり飲んだりすることによって口を動かすことで唾液腺を刺激することもできないため、口腔内が乾燥しやすくなってしまいます。つまり、結果として、口臭が発生しやすい口腔環境を作ってしまうことになるのです。
3 質の良い睡眠を充分に取る
免疫力の高い元気な身体を維持するには、疲れを溜め込まないことが大切です。風邪の回復には睡眠と休養が実に効果的であることからもわかるとおり、1日の疲れをしっかりと取り除くのに睡眠を取ることは必要不可欠です。ただし、ただ長時間眠れば良いというわけではなく、質の良い睡眠を充分に取ることが重要といえるのです。
質の高い眠りを得るには、睡眠導入に効果的な環境音楽を聞いたり、自分の好みの香りがするお香を炊いてみるなど、リラックスできる環境を整えることがオススメです。また、睡眠前に読書をすると、気持ちが落ち着いて眠りやすくなることもあるかもしれません。何をすればリラックスできるかは、個々人皆それぞれです。自分に合った方法を見つけて、ぜひトライしてみてくださいね。
4 ストレスをうまく解消して楽しく生活する
私たちの身体はストレスがかかると、眠っている時と同じように副交感神経が優位に働く状態になります。つまり、眠っている時と同じように唾液の分泌量が低下し、口腔内が乾燥する状態になるのです。口腔内の乾燥は口臭の発生原因となるため、これを防ぐにはストレスを溜め込まないうちに上手く解消してあげることがポイントになります。
身体を動かすのが好きならスポーツをしたり、あるいは家でのんびりとリラックスするのが好きなら音楽を聴いたり、ビデオやオンライン上で映画を見たりするのも良いかもしれません。
また、親しい友だちとのおしゃべりはストレスの解消だけでなく、口を動かすことが唾液腺の刺激となるため、唾液の分泌量をアップしてくれる効果も期待できますよ。
5 適度な運動を心がける
人の身体は有酸素運動を行うことで活性化します。また、有酸素運動による適度な疲れは、夜の睡眠の質を上げてくれる効果もあるはず。ここで言う適度な運動とは、軽いジョギングやウォーキングなど、過度になりすぎない程度の運動のことを指します。
過度な運動は身体への負担になるばかりか、かえって精神面でのストレスにもなりかねません。日々の日課として楽しく続けられる程度の運動を心がけましょう。
6 歯周病対策を行う
何と言っても歯周病は口臭を発生させる大きな原因の一つです。なぜなら、歯周病によってできた歯と歯ぐきの隙間の歯周ポケットに生息する歯周病菌が、食べカスや古くなって剥がれ落ちた口腔内の粘膜などをエサにして繁殖する際、嫌なニオイのガスを発生させるため。これらのニオイは「腐った生ゴミ臭」や「ドブ臭い」ニオイがする口臭などと表現されるほど、強烈なモノとなります。
また、歯周病は進行すると歯が抜け落ちてしまうばかりか、近年では「糖尿病」などの生活習慣病をはじめ、「心臓病」や「脳梗塞」などといった重大な疾病を引き起こす原因になるとも示唆されています。そうなる前に、定期的な専門医への受診・相談を行うように心がけましょう。
歯周病を予防、進行させないためにも、日頃から正しい方法での歯磨きやマウスウォッシュでのうがいなど、丁寧なオーラルケアを心がけるといいですね。
7 唾液の分泌を促すうがいやマッサージを行う
先にも触れたとおり、口臭を予防・改善するには充分な唾液の分泌が大きなポイントとなります。こまめな水分補給で身体の中に唾液のもととなる水分を充分に蓄えたら、手軽にできる舌まわしや唾液腺マッサージなどの簡単エクササイズをすることで、唾液の分泌を促す効果をアップしてあげるのも一つの手段です。
また、水分補給に疲れたら、気分転換を兼ねてうがいをしてみてはいかがでしょうか?うがいをすることで唾液腺を刺激し、唾液の分泌量をアップしてくれる効果が見込めますよ。
最後に
加齢がもとで口臭が発生する理由には、大きく分けて「加齢による口腔内の環境悪化」および、「加齢による免疫力の低下」の2つがあることがお分かりいた大たでしょうか?
ただしこれは、年齢を重ねれば誰もが経験する自然現象のようなもの。だからと言ってただ見過ごしたり諦めたりするのではなく、積極的に「加齢に負けない口臭撃退法」を行いましょう。
いずれもちょっとした心がけで行うことができる簡単な方法ばかりです。ぜひ、爽やかな息を手に入れて、充実した社会生活および日常生活を送りましょう。