なんだか口臭が「鉄臭い」。自分の口臭にそんな金属臭を感じたら、かつて虫歯などの治療に「詰め物」や「被せ物」として使った「銀歯」や「ブリッジ」、「部分入れ歯に使われている金属」などの存在を疑ってみましょう。
ちなみに私たちの口腔内において「銀歯」と呼ばれるているものは、昭和36年度に施行された国民皆保険制度で虫歯や欠損歯を修復するための材料として認められ、日本で広く用いられているものです。
銀歯は実際、材料のうちの約56%が銀から成るものの、その酸化と黒ずみを防ぐためにそれぞれおおよそ20%のパラジウムと12%の金のほか、銅・亜鉛・錫などの異種金属が配合された銀合金なのです。
そして、この銀合金が唾液などによる経年変化によって劣化し、歯の詰め物や被せ物が取れてしまった場合、その欠損部分から口臭が発生することがあります。
また、これら銀合金に含まれる金属の腐食が原因で、鉄くさい口臭が発生することもあります。なお、銀合金に歯垢がたまると、さらなる金属腐食が進行して、より鉄くさい臭い口臭が発生する可能性が高くなります。
一方で、ブリッジや部分入れ歯などに用いられている金属部分が経年変化によって腐食し、鉄くさい口臭の原因となる場合もあります。
ただし、何よりも注意すべきことは、これらの鉄くさい口臭を放置することが虫歯や歯周病の罹患につながり、歯を失うという大きなリスクを招く可能性があることです。
そうならないためにも、ここでは銀合金(銀歯)がもとで発生する口臭の原因とその口臭を改善する対策をご紹介したいと思います。
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銀合金(銀歯)やブリッジ、部分入れ歯などが招く口臭の原因
1 銀合金(銀歯)に付くキズ・ヨゴレ
実は銀合金の材質はキズが付きやすく、その表面には目に見えない無数の細かなキズが数多く付いているものです。また、このキズは当然、年数が経てば経つほど増えていってしまうもの。
そして、これらのキズの中に細菌が入り込み、ちょっとやそっと歯ブラシで擦ったくらいではきれいに落とすことが困難になります。こうして銀合金のキズにこびりついた細菌が増殖する際に発生させる嫌なニオイのガスが、口臭の発生原因の一つとなるのです。
2 銀合金とその境目に溜まるヨゴレ
例えば歯の上に銀合金の被せ物をする場合は、型を取って歯と銀合金製の被せ物のあいだにスキ間ができないようにするのが通常です。
このため、見た目には残存する歯にピッタリと合った被せ物ができますが、精密に言うなら、残存歯と銀合金製の被せ物のあいだに、ミクロ単位でのスキ間がどうしてもできてしまうものなのです。
そして、このスキ間に細菌が入り込み、蓄積することで口臭の発生原因となります。
3 銀合金と残存する歯を接着する歯科用セメントの溶解
虫歯などに罹患して削った欠損部分に、銀合金を埋めて(詰めて)治療する際、残った歯と銀合金を接着するために歯科用セメントを使用します。
しかし、この歯科用セメントは年数が経つにつれ、唾液や水分によって溶けてしまいます。この溶けた部分に食べカスや口腔内の古くなって剥がれ落ちた粘膜などが入り込むことで、口臭を発生させる細菌の温床となってしまうのです。
4 銀合金の腐食
銀合金が腐食することで、その「鉄くささ」が口臭となって発生することがあります。
また、銀合金に歯垢がたまると、銀合金に含まれる金属の腐食がさらに進行し、より鉄くさい臭い口臭を発生させるリスクが高まります。
5 ブリッジ・部分入れ歯などの金属部分の腐食
4と同様、ブリッジや部分入れ歯などの金属部分が経年変化によって腐食して、鉄くさい口臭を発生させる原因になる場合があります。
自分でできる、銀合金(銀歯)が原因で発生する口臭を改善する3つの対策
1 正しく丁寧な方法での歯磨きの徹底
そもそも銀合金(銀歯)になっている歯というのは、もともとプラークコントロールがうまくできなかったためにヨゴレや歯垢が溜まり、虫歯になってしまった箇所と考えられます。
また、銀合金(銀歯)になれば、その歯の欠損部分に銀合金を詰める際に使用した歯科用セメントが溶けてスキ間ができたり、あるいは、歯に銀合金を覆いかぶせた際に、残存歯と被せ物のあいだにスキ間や段差などが生じることもあります。
つまり、もともと上手く歯磨きができていなかった場所に、さらなる磨き残しが出そうな箇所が増えるわけですから、「詰め物」にせよ「被せ物」にせよ、銀合金(銀歯)を使用している歯とその周辺は、特に高い意識を持って丁寧な歯磨きを行う必要があるのです。
また、プラークコントロールがうまくできないと、虫歯だけでなく、口臭の原因の大きな一つである歯周病に罹患するリスクも高まります。
このリスクを回避するためには、市販のものとは違い、口臭や歯周病予防への効果が期待できる成分がしっかりと配合されている歯磨き粉を使用してみるのも一つの方法といえるでしょう。
2 マウスウォッシュを用いたブクブクうがいの実践
歯磨きだけでは落としきれない歯と歯のスキ間のヨゴレや、歯ブラシが届きにくい奥歯の裏側などのヨゴレや細菌までしっかり落とすには、歯磨き後のマウスウォッシュの使用が欠かせません。
また、マウスウォッシュの使用は、歯を磨く時間がないときにも非常に便利。ブクブクうがいのやり方を徹底して行えば、除菌・ヨゴレ除去の効果がかなり期待できるはずです。
3 歯間ブラシやデンタルフロスなどを積極的に使用する
先にも述べた通り、歯磨きだけで口腔内のヨゴレや細菌を落としきるのは至難の技。特に、残存している歯と被せた銀合金(銀歯)の段差やスキ間、あるいは銀合金(銀歯)と隣り合わせる歯のあいだなどは、いっそうヨゴレや食べカスがたまりやすく、細菌の温床となりやすい場所です。
これらのヨゴレや細菌をかき出してしっかりと落とすためには、歯間ブラシやデンタルフロスなどを活用することがオススメです。
なお、歯と歯のスキ間が狭いところはデンタルフロス。また、歯と歯のスキ間が広いところやブリッジのつなぎの部分などには、歯間ブラシやワンタフトブラシなどをそれぞれ使い分けるのがベストです。
デンタルフロスの使用時に、「同じ箇所でデンタルフロスが引っかかる」、「フロスが切れてしまう」などの場合には、その箇所の銀合金(銀歯)に何かしらの不具合がある可能性が考えられます。そういう時には、ぜひ歯科医師に相談するようにしましょう。
最後に
ここまで読んでいただいてわかるとおり、銀合金(銀歯)にはヨゴレを蓄積させやすいという性質があります。したがって、年数が経っている銀合金(銀歯)ほど、口臭の原因になりやすいと言えるのです。
銀合金(銀歯)が原因の口臭を感じた場合には、まずは上記1~3のセルフ口臭ケアを実践してみることをオススメします。ただし、しばらく実践してみても効果が見られない場合は、歯科医師に相談して銀合金(銀歯)のチェックや、歯石の除去などを行いましょう。
なお、歯石のチェックや除去は、通常3~6ヵ月の間に定期的に行うのがベストとされています。歯石の除去は口臭予防だけでなく、口臭のもととなる歯周病予防、虫歯予防にもなります。ぜひ習慣化するように心がけてくださいね。
なお、銀合金(銀歯)をケアするのが面倒な方には、ヨゴレのつきにくいセラミック材質に変えるなどの選択肢もあります。セラミックにはキズやヨゴレが付きにくいほか、残存歯との強力な接着が可能なため虫歯に罹患しづらい。また、金属アレルギーが起きないなど、多くのメリットがあります。
ただしその反面、保険が利かず、銀合金(銀歯)に比べて高額であるなどのデメリットもありますから、皆さんの目的や用途などに応じて、検討されると良いかと思います。
<参考サイト>
有田歯科 (http://arita-sika.jp/)
EPARK歯科 (https://haisha-yoyaku.jp/)
Ginza Medical Dental Clinic ブランパ (http://www.blancpa-ginza.com/)