口臭を予防・改善するために、まずドライマウスを予防して改善することが必要な場合があります。それは、ドライマウスに罹患すると、「ドライマウスを正しく理解して、口臭を消す」のページでも述べたとおり、唾液の分泌量が減少して口腔内が乾燥。その口腔内の乾燥が「口臭を引き起こす」直接的な原因となるためです。
そもそも口臭が発生する主な原因は、口腔内で増殖した細菌が死滅していく際に発生させる腐敗臭だと言われています。例えば、虫歯があったり、歯周病に罹患した人の口臭がキツクなるのは、虫歯によってできた歯の穴や歯周病がもとで起きた歯肉の炎症部分に数多くの雑菌が繁殖し、それらが死滅していく際に腐敗臭を発生させるためなのです。
一方で、唾液は食事や間食によって口腔内に残留している食べカスなど、歯や口腔内の粘膜に付着した汚物を胃の中に洗い流すことにより、口腔内を清潔に保つという重要な役割を担っています。また、充分な量の唾液が分泌されている場合、口腔内は中性に保たれると同時に微生物の発生が抑制されるため、炎症性疾患や中程度以上の歯周病に罹患していない限り、口臭は発生しづらくなるのです。
つまり、唾液の分泌量が減少するということは、口腔内が乾燥して酸性化することを意味します。そうなると細菌などの微生物が増殖してしまうため、虫歯や「口臭を引き起こす原因」となってしまうのです。
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あなたは大丈夫?
ドライマウスをセルフチェックする方法
まずは以下項目の中で、いくつ自分に当てはまるものがあるかをチェックしてみましょう!
・口の乾きが3カ月以上毎日続いている。
・あごの下が繰り返し、あるいはいつも腫れている。 ・乾いた食べ物を飲み込むときに、しばしば水を飲む。 ・水をよく飲む。 ・夜間に起きて水を飲む。 ・乾いた食品がかみにくい。 ・口の中がネバネバする。 ・口の中が粘って話しにくい。 ・口臭がする。 ・義歯で口の中が傷つきやすい。 |
(鶴見大学歯学部附属病院ドライマウス専門外来、ドライマウス問診票より)
いかがですか? ご自身の現在の口腔内の症状として、いくつ当てはまるものがありましたか? 該当する項目が多ければ多いほど、ドライマウスに罹患している可能性は高くなります。
ちなみに、日本におけるドライマウスの推定患者数は約800万人とのこと。しかし、欧米の疫学調査では、ドライマウスの患者数は人口の25%に相当するという報告がされていますから、その場合、日本では約3000万人もの人々がドライマウスの症状を抱えている計算になるわけです。
ドライマウスに罹患すると、口腔内が乾燥することによってさまざまな不快な症状を引き起こすだけでなく、それによって起こる「口臭」などがもとでストレスを抱えたり人間関係に支障をきたすなど、日常生活の質を低下させる原因となってしまいます。
また、ドライマウスを「単なる口腔内の乾燥」として甘く見ていると、その背後に重大な疾病が隠れている場合もあります。「ドライマウスを正しく理解して、口臭を消す」のページでも触れているとおり、ドライマウスが「糖尿病」「シェーグレン症候群」「脳卒中」などの疾病の症状として現れている場合があるためです。
さらに、高齢者の方の場合は、ドライマウスによる口腔内の乾燥がもとで食べ物をスムーズに飲み込むことができなくなり、誤って気道に食べ物が入ってしまうことによって起こる「誤嚥性肺炎」を引き起こすこともあります。そしてこの「誤嚥性肺炎」は、75歳以上の高齢者の方々の死亡原因第1位とされる恐ろしい病気なのです。
ドライマウスの症状がある場合の対処方法
1 室内の湿度をコントロールし、乾燥を防ぎましょう
エアコンなどで空気が乾燥した室内にいると、鼻が乾燥することにより口呼吸の原因となる場合があります。加湿器を用いるなどして常に室内の湿度をコントロールすることにより、口腔内の乾燥を誘発するのを防ぐように心がけましょう。
2 外出時にはペットボトルやマイボトルを持ち歩きましょう
外出する際はできるだけペットボトルやマイボトルを持ち歩き、こまめな水分補給をすることで常にお口の中を潤すように気をつけましょう。ただし、ペットボトルやマイボトルの中身は虫歯や糖尿病の誘引を避けるため、糖分の入った飲料は避け、水やお茶などを選びましょう。
3 アメやガムのほか、酸味のある食品を摂取することで
唾液の分泌を促しましょう
アメを舐めたりガムを噛んだりすることにより、口輪筋(こうりんきん)と呼ばれる口の周りの筋肉が鍛えられて唾液の分泌を促すことにつながります。また、梅干しやレモンなど酸味のある食品を食べることによって、唾液の分泌量を増加させることができます。だたし、口腔内に「ただれ」や「ひび割れ」のある重度のドライマウスの方の場合、酸味の強い刺激が痛みを引き起こす場合があるので注意しましょう。
4 入れ歯や義歯があっているかどうか確認しましょう
食べ物を正しく充分に「噛む」ことによって、口腔内に充分な量の唾液が分泌されます。一方で、自分に合わない入れ歯や義歯を使っていると噛み合わせが悪く、キチンと食べ物を噛むことができないため充分な唾液が分泌されません。ですから、入れ歯や義歯に違和感を感じたら歯科医を受診し、自分に合う適切なものを作ってもらいましょう。
5 口輪筋(こうりんきん)を鍛えましょう
唾液の分泌量を高めるには口輪筋(こうりんきん)を活発に動かし、鍛えることが大切です。3のように、「アメ」「ガム」「酸味のある食品」を摂取する方法のほか、舌を上顎に付けるような大きな動作で舌打ちしたり、舌を左右に大きく回すなどの運動を実践しましょう。
6 唾液腺のマッサージを行いましょう
「舌の付け根の真下に当たる顎の部分」「耳たぶの下あたり」「顎のエラのあたりから約3センチ内側の部分」などを指で押して刺激しましょう。刺激することによって唾液腺の働きを活発にし、唾液の分泌を促す効果が見込めます。
まとめ
ドライマウスの症状が軽度な場合は、上記のような対策をとることで症状の緩和が期待できます。
ただし、先にも述べたとおり、ドライマウスの背後には重大な疾病が隠されている危険性もあります。ですから、「口腔内の強い渇き」を常に感じる状態が3カ月以上続く場合は、その症状を安易に見過ごすことなく、歯科クリニックや専門医を受診されることをオススメします。