自分に口臭を感じたら、今すぐにでもその「口臭を消したい、改善したい」と思う。そして、そう思い始めたらもう、そればかりが気になって何も手につかない。現代社会においては、そういう方も数多くいらっしゃることでしょう。実際、今や口臭は「スメルハラスメント」の一つとして捉えられ、周囲の人々に不快な思いをさせるニオイとして位置付けられることもあるのです。
口臭があると気になって、人とのコミュニケーションもうまくいきません。つまり、本来、口臭は周囲の人々との円滑な人間関係を築くうえでは無用なものなのです。 そこで、ここではご自身の口臭が気になる方に向けて、ちょっとしたことに気をつけるだけでできる口臭をセルフコントロールする方法をご紹介いたします。
そもそも口臭はその強さの差こそあれ、誰にでも起こりうるもの。ですから、「口臭をセルフコントロールする」という点において最も大切なことは、「周囲の人たちが不快感を感じない程度に口臭をコントロールする」ということなのです。
ここでは生理的口臭など時間の経過につれて消える口臭とは違い、主に歯周病など、口腔内の感染症によって引き起こされる口臭をコントロールする方法についてご紹介いたします。
コンテンツ
歯周病がもとで起こる口臭の原因とは
主に歯周病など口腔内の感染症によって引き起こされる口臭は、口腔内の細菌がもとになって発生する揮発性硫黄化合物と呼ばれる気体が原因です。そしてこの揮発性硫黄化合物を作りだしてしまう大きなきっかけとなるのが、「唾液の分泌量の減少」や「舌苔(ぜったい)」と呼ばれる、舌の上に付着している白い苔状のものによる細菌の増殖なのです。
ですから、「口臭をセルフコントロールする」ためには、口腔内の細菌を増殖させないこと。そしてそのためには、「唾液の分泌量を増やすこと」および「舌苔を除去すること」が、何よりも重要で効果的な対策と言えるでしょう。
では、唾液の分泌量を増やしたり、舌苔の除去を行うには、具体的にどうすれば良いのでしょうか?
「唾液の分泌量を増やす」ための具体的な方法
|
*1「ガムを噛む」または「アメを舐める」
文字通り、ガムを噛んだり、アメを舐めたりするだけでも唾液の分泌量はアップします。
また、この中間ともいうべき方法としてオススメなのが、舌の上でガムをコロコロと転がすというもの。これは口腔内で起こる異物への反応を利用することによって、唾液の分泌量を増進させるために考案された方法です。とはいえ方法は実に簡単で、なおかつ効果が高いと言われています。
具体的には、毎回、食事の後に(歯磨きをする代わりに)、キシリトール入りなど歯のケアに良いとされるガムを1粒噛み、それを「口の中で小さく丸めて舌の上に乗せておく」だけ。こうするだけで唾液腺が刺激され、唾液の分泌量が増加するのです。すると、唾液は次第にサラサラになり、のどの炎症を抑えることができます。これは時として口臭の原因となりうる「膿栓(のうせん=別名、臭い玉)」と呼ばれる米粒大の細菌の死がいの固まりが、喉の奥にある扁桃(へんとう)の穴にできるのを抑制することができます。また、舌そのものが潤うことにより、舌の奥の方から発生する口臭を抑えることも可能です。さらに、口呼吸の改善にもなるため、発症すると口腔内が酸性化して殺菌力が低下。細菌が増殖して口臭を引き起こす原因となるドライマウスを防ぐことにもつながるのです。
なお、精神的に緊張しやすい方やストレスを感じやすい仕事をしている方などは、適度に水分を補給しながらこの方法に取り組むと良いでしょう。ちなみに水分補給をする場合には、ガムを頬と歯の間に挟めばOKです。口腔内の緊張の緩和が自動的にはかれて唾液の分泌量が増加すると同時に、自発的な水分補給を行うことによって、やはりドライマウスの抑制につながります。
何よりこの方法の魅力的なところは、小さく丸めたガムを舌の上でコロコロと転がすだけなので、周囲の人に気付かれにくいということ。ちなみに誰かと会話をする場合には、水分補給をするときと同様に、ガムをすばやく頬と歯の間に挟むようにすれば特に違和感なく話をすることができます。だからこそ、舌の上で転がすのは、キシリトール入りなど歯のケアに良いとされるガム「1粒」で充分なのです。
この方法を実践すれば、口腔内を常にリラックスした状態に保てるため、唾液の分泌を促し続けることができます。そしてそれこそが「口臭を自らコントロールする」ということにつながるです。
*2 「深呼吸をする」
ところで、平均的な唾液の分泌量については、そもそも日本人は欧米人に比べると分泌量が少ないという報告がされています。
また、仕事や人間関係におけるストレスの多い現代社会においては、実は本人も気がつかないうちに「歯を食いしばっている人」が多いのも事実。歯を食いしばってしまうと、口腔内が緊張状態に陥り、唾液の分泌量は減ってしまいます。そしてそれが、口臭の発生へとつながってしまうのです。ご自身が歯を食いしばっているかどうかを確認するためには、ご自身の舌の周囲を鏡で確認してみてください。舌の周囲に自分の歯型がキザギザと付いているとしたら、それはまさに、あなたが「歯を食いしばっている」という証拠です。
また、「歯を食いしばる」という行為は、何かに集中しようとする場合にも頻繁に起きるもの。まさに現代において欠かせないツールであるパソコンやスマートフォンを使う時には、かなりの集中力を必要とします。そして、人間は歯を食いしばった方が物事に集中しやすいため、知らず識らずのうちにそれが癖になってしまうのです。
ある研究者の報告によれば、日本人の9割がこの「歯を食いしばる」という悪癖に侵されてしまっているとのこと。意識していない方もたくさんいらっしゃるかもしれませんが、普段、口を閉じている際、上下の歯には「安静空隙(あんせいくうげき)」と呼ばれるスキマが存在します。しかし、「歯を食いしばる」という状態は口腔内が緊張状態にあることを意味し、これは自律神経のうちの「交感神経が興奮した状態」を表します。そして、交感神経が興奮している状態にあると、唾液の分泌量は減少してしまうのです。
この状態を改善して口腔内をリラックスした状態にしたいなら、副交感神経を優位にしなければなりません。ただし、これは日中、仕事や家事などの活動時間帯にはかなり難しいことも確かです。そんな時に誰もが簡単にできる方法が「呼吸コントロール法」。具体的には、腹式呼吸である深呼吸を行うことによって、唾液の分泌を促す方法です。
また、これよりもさらに手軽な方法が、意識的に「日常を笑顔で過ごす」こと。笑顔でいることによって顔の筋肉の緊張をほぐせば、自然と唾液の分泌量は増加します。そうすれば、口臭をセルフコントロールできるだけでなく、周囲の人たちとの人間関係もきっと楽しいものになりますね。
舌苔を除去する方法
まず、オススメの方法の一つとして、専用の舌ブラシを利用しましょう。歯ブラシを使って行うこともできますが、やはり専用の舌ブラシの方があたりが柔らかく、舌を傷つけてしまう危険性も少なくて済むためです。
回数は1日1回。睡眠中は唾液の分泌量が減少して舌苔が発生しやすくなるため、舌ブラシを使用するタイミングとしては起床後が良いと思われます。舌ブラシは水に浸し、舌の奥の方から力を入れずに手前に引いて、ブラシに汚れが付かなくなるまで力を入れすぎて舌を傷つけることのないよう、静かに磨きましょう。
上記のように、「唾液の分泌を促すこと」や「舌苔を除去する」ことによって口臭のお悩みが緩和されたり、解消できる効果はかなり期待できるはず。また、この方法にプラスアルファして、マウスをッシュなどの洗口剤を使用すれば、口腔内での細菌の増殖が抑制でき、さらなる口臭予防も期待できるでしょう。
やはり口臭の専門医への相談も重要です
そうは言っても、口臭が起こる原因はその人それぞれ。歯周病や虫歯はもちろんのこと、時として親不知に細菌が溜まることで口臭が引き起こされることもあれば、その口臭の背景に、全身疾患など病的な理由が隠されている場合もあるのです。
親知らずが原因の場合には、親不知を抜歯することによってその口臭は解消されますが、口臭の背景に病的疾患がある場合には、当然ながらその疾患の治療が必要になってきます。ただし、口臭の原因を突き止めて治療するには、やはり歯科医院や病院などの専門機関での検診・治療が必要です。ぜひ、定期的な検診を受けることを習慣として身につけるよう心がけましょう。