心理的口臭とは、口腔内には何の問題もなく、実際、口臭は発生していないにもかかわらず、自分自身では口臭を感じてしまい、社会生活を営む上での障害となっているまさに心理的な口臭のことを指します。
本人の思い込みによる自覚症状として感じる口臭であるため、通常、「口腔外来」などでの検査結果は陰性、つまり「口臭は発生していない」と診断されます。
ただし、場合によって口臭を感じてしまう本人の心理の背景に、大きなストレスや不安、また過去のトラウマなど「心の病気」が隠れていることがあります。ですから、常日頃気になる口臭を感じたら、あまり長いあいだ放置せず、「口腔外来」や「精神科」など専門医の診察や治療を受けるなどの注意が必要です。
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本人の思い込みが原因となって発生する心理的口臭
心理的口臭は、大きくわけて、
1. 仮性口臭症本人は自分の口臭を認識し、社会生活を営むのに弊害があると考えている。しかし、実際には周囲の人々が認めるほどの口臭はなく、その検査結果を専門医によって説明されることにより納得。改善が期待できるもの。 2. 口臭恐怖症検査の結果は「陰性」、つまり「口臭は発生していない」と診断され、専門医からの正しい説明を受けたにもかかわらず、「自分には口臭がある」と思い続けてしまう症状。 |
の2種類に分類できます。
1. 仮性口臭症
口腔内に特別な問題はなく、実際には口臭が発生していないにもかかわらず、本人は仕事や日常生活などの社会生活を営む上で支障をきたすほどの口臭があると思い込み、治療を望む場合があります。
このような症状のことを「仮性口臭症」と呼びます。ただし、仮性口臭症の方は「口腔外来」など、口臭に関する専門治療を行う科での検査結果が「陰性」であれば、歯科医師や歯科衛生士などの専門家からの説明を受けることにより、自分には「口臭は発生していない」という事実を受け入れ、理解することが可能です。
そうすることで意識が改善され、本来、発生していない思い込みの「口臭」からも解放されるのです。
2. 口臭恐怖症
「口腔外来」など、口臭に関する専門治療を行う科での検査結果が「陰性」であり、歯科医師や歯科衛生士などの専門家から、明確な説明を受けたにもかかわらず、それでもなお「自分には口臭が発生している」と思い続けてしまう症状のことを言います。
また、もともと何らかの病気が原因で起こる病的口臭などがあった方が、治療を受けることによってその口臭が消失したにもかかわらず、引き続き自分には「口臭が発生している」と思い続けるケースもあります。
このように、実際には「口臭は発生していない」のに、「口臭が発生している」と思い込み続けてしまう方々は、何らかの「過去のトラウマ」を抱えていたり、「大きな不安」や「強いストレス」を感じている場合が多いとされています。
例えば、以前に周囲の誰かしらから自らの口臭を指摘された経験があると、それが引き金となって、それ以降、「自分には常日頃、口臭が発生している」と思い込んでしまうのです。
そういう方の場合は、周囲の人がたまたま「鼻のあたりを手で覆う」ような仕草をしたり、「(決して自らの口臭が原因ではない何らかの理由で)顔を背ける」もしくは「咳払いをする」などの行動を示しただけですぐさま、その原因を「自分の口臭を迷惑に思っているからだ」と思い込んでしまうのです。
このように、本来発生しているはずのない「自らの口臭」を感じ、それに対して過剰に敏感になりすぎている方は、心理的な要因が強いとものと考えられますので、神経科などの専門医への相談が必要であると考えられます。
心理的口臭かな(この口臭の原因は何)?と思ったら……
まずは歯科・内科・耳鼻咽喉科などで受診し、口臭が実際に発生しているのかどうか、また発生しているのであれば、その原因を究明するための専門的な検査を受けることが必要です。
なぜなら、その検査結果が「陰性」で、「自分には口臭が発生する原因になるような疾患はない」という事実がわかれば、少なくとも自分には病的口臭は発生していないという事実がわかるからです。
その上で「ニオイの強い食品も摂取していない」、また「飲酒や喫煙もしていない」ということであれば、今度は外的口臭が発生しているという可能性も消えます。すなわち、仮に口臭が発生している可能性があるとすれば、残りは消去法で「生理的口臭」であるということになります。
ただし、「生理的口臭」は寝起きや緊張時など、唾液の分泌量が減少した時には特に口臭が発生する原因になるような疾患のない健康な人、つまり誰にでも一時的に生じる可能性がある口臭であるため、「仮性口臭症」の方の場合には、そこまで目くじらを立てるほど神経質になる必要はない口臭であると理解でき、症状も緩和されるのが通常です。
一方で「口臭恐怖症」の方の場合は、そもそもソムリエや料理人がワインや食材のわずかな味の違いでも認識できるのと同じように、一般の人々に比べて臭いに対して非常に敏感な場合が多いのです。
その上、本来なら「口臭が発生している原因がわかれば不安が軽減される」はずですが、実際には「口臭は発生していない」のに、「口臭が発生していると思い込んでいる」ため、「なぜ、自分は口臭が発生していると思い込んでしまうのかの原因」を究明し、その原因を取り除いてあげることが重要になります。
背景には「心の病」を抱えている可能性も考えられるため、それが「過去のトラウマ」なのか「大きな不安」や「強いストレス」なのか、もしくはそれ以外の別の原因なのかなどを探り、正しい治療を受けるためにも、精神科などを始めとする専門医を受診する必要性も考えられます。
心理的口臭への対策は……
心理的口臭への対策として気をつけなければいけないのは、「過剰な口臭対策を行うことはかえって逆効果になってしまう危険性がある!」ということです。なぜなら過剰な心理的口臭対策には、最初は心理的口臭であったものが、本当の口臭を引き起こしてしまうという「落とし穴が隠されている」からです。
つまり「自分には強い口臭がある」と思い込んでしまうことで、場合によって、過度な頻度や時間を使って歯磨きをしてしまったり、必要以上に過剰な力を入れて歯間ブラシなどを使ってしまうことがあるのです。そうすることで、逆に口腔内の乾燥を招いたり歯茎に外傷を起こしてしまい、口腔内の免疫機能を低下させてしまった結果、口臭が強くなってしまうケースも見うけられます。
言うまでもなく、正しく丁寧な口腔ケアを行うことは効果的な口臭改善・口臭予防の対策になります。ただし、心理的口臭の方の場合には、むしろ口腔ケアが過度になりすぎないように注意を払う必要があるのです。
そもそも心理的口臭とは非常にデリケートなものです。常日頃気になるほどの口臭をご自身に感じると同時に、それが社会生活を営む上での支障になるものであるという強迫観念に囚われている場合には、お一人で悩み続けるよりも、まずは歯科医などに相談されることをオススメします。