歯周病は口臭を引き起こす元となる病気の一つ。ですから口臭を消すためには、まずは歯周病をきちんと理解することが大切です。
歯周病とは、正しく歯磨きができていないなど、歯や口腔内の清掃不良によって歯と歯肉の間の溝(歯周ポケット)にプラーク(歯垢)と呼ばれる細菌が定着。次第にそのプラークが歯石となり、歯茎に炎症を起こすだけでなく、その周りの組織まで破壊していく細菌感染症のことを言います。
歯周病の恐ろしさは、その多くがこれといった「痛み」などの自覚症状を感じないままに進行してしまうこと。それゆえ歯周病は「サイレント・ディジーズ」という別名を持ち、罹患している本人も気がつかないうちに静かに進行する病気として認識されているのです。
症状が進行した場合には歯周ポケットが深くなり、歯槽骨(しそうこつ)と呼ばれる歯の根の部分を支える骨が溶けてしまうため、最終的には抜歯せざるを得ない(放っておくと自然に歯が抜け落ちてしまう)状況にまで追い込まれてしまいます。
近年の厚生労働省の調査によれば、「歯周病」に罹患している人は成人のうちの約8割。また(財)8020推進財団による「永久歯の抜歯原因報告書」によれば、歯を失う原因は「歯周病」の44.1%がもっとも高く、これは「う歯=虫歯」の32.4%を10%近くも上回っているのです。
歯周病には、歯磨きが不十分であることのほか、「歯の噛み合わせの悪さ」や「歯ぎしりをする癖」などが関係しています。また、「喫煙習慣」「ストレス」「不規則な生活」なども深く関わっていると言われています。つまり、歯周病は生活習慣病の一つと言えるのです。
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【 こんなあなたは要注意! 歯周病になるリスクをチェック】
1. 喫煙の習慣がある。
タバコを吸うことによって、タバコの煙の中に含まれる有害物質が口腔内の粘膜や歯肉を通して吸収されます。これにより、歯周病に罹患するリスクがアップします。
2. 疲労やストレスの多い生活をしている。
疲労やストレスが蓄積してしまうと、免疫力が低下してしまいます。このため、歯周病に罹患するリスクがアップするのです。
3. 食べ物をよく噛まない。
食べ物を食べる際に、よく咀嚼(そしゃく)しないと充分な唾液が分泌されません。唾液の分泌が悪いと、口腔内は細菌が繁殖しやすい環境になってしまいます。
4. よく間食をする。
口腔内の細菌は、糖分を栄養素にして歯周病のもととなるプラーク(歯垢)を作り出します。ですから、間食に甘いものなどをのべつ幕なしに食べる生活は避けましょう。
【あなたは大丈夫?歯周病をセルフチェックする方法】
まずは以下項目のうち、いくつ自分に当てはまるものがあるかをチェックしてみましょう!
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あなたはいくつ当てはまりましたか?
●該当項目が3~5つの方
要注意の段階です。正しいブラッシングや歯科医院でのチェック・予防を行いましょう。
●該当項目が6~7つの方
要注意の段階以上に、歯周病が進行している可能性が高いと考えられます。急いで歯科医院の診断(治療)を受けましょう。
●該当項目が全ての方
かなり歯周病が進行している段階と考えられます。一刻も早く、歯科医院の診断(治療)を受けることをオススメします。
※該当項目が3つ以上ある方はできるだけ早い段階で歯周病予防もしくは治療のため、歯科医院を受診することをオススメします。
【口臭を引き起こす歯周病の原因、プラークとは?】
プラークとは歯垢のことであり、食べ物のカスではなく、口腔内に存在する細菌の塊のことを指します。 そして、このプラーク1mgの中には、驚くことに数億~数兆個もの細菌が潜んでいると言われています! つまり、プラークの中には、う歯(虫歯)や歯周病、ひいては口臭の原因となる目には見えない細菌群がひしめいているのです。
【プラークには2種類あります】
<歯肉縁上プラーク(歯垢)>
肉眼で見て確認できる、歯の見えている部分に付着するプラーク(歯垢)です。色は黄白色をしていて、触ると粘着性があるのがわかります。
この歯肉縁上プラーク(歯垢)中に生息する細菌は、食べカスなど糖をエネルギー源として酸を作り出し、それが「う歯(虫歯)の原因」になるのです。
<歯肉縁下プラーク(歯垢)>
歯と歯肉の間の溝「歯周ポケット」の中に付着するプラーク(歯垢)です。このため、目で見て確認するのは難しいプラーク(歯垢)です。
歯肉縁下プラーク(歯垢)の中に潜む菌は嫌気性細菌という酸素を嫌う細菌であるため、 歯周ポケットのように極力酸素の少ない環境を好んで棲みつきます。また、この細菌はアミノ酸やたんぱく質などをエネルギー源としているため、タンパク質を豊富に含む歯肉の上皮が定期的に剝がれ落ちてくる歯周ポケットは、「歯周病を引き起こす原因」となるこの歯肉縁下プラーク(歯垢)の格好の棲家と言えるのです。
【歯周病はこうして進行していく】
《 ステージ 0 》
歯茎は健康な状態を保っています。
●歯茎の色や状態 |
《 ステージ 1 》![]() 「歯肉炎」に罹患している状態です。 ●歯茎の色や状態・赤く腫れたり、うっ血している。 ・指先などで歯茎を押すと、出血する。 ●行うべき対策 口腔内の隅々まで正しく清掃できる歯磨きを心がける。また、歯間ブラシやデンタルリンスなど、口腔内の清掃グッズを併用することによって、きちんとプラーク(歯垢)除去を行うことを日々の日課にしましょう。 |
《 ステージ 2 》
「歯周炎」に罹患している状態です。
●歯茎の色や状態 ・歯茎が下がって、以前よりも歯が長く見える。 ●行うべき対策 |
《 ステージ 3 》
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【歯周病はもはや口腔内のみの病気ではない?!】
以前は口腔内のみの病気と捉えられてきた歯周病ですが、近年ではそれが身体全体にもたらす影響についての研究が進められています。
例をあげるなら、肥満の方の脂肪細胞から放出される炎症物質が歯茎に炎症を引き起こし、歯周病の発症や進行のきっかけとなっているのではないか、ということ。 また、これとは別に、糖尿病の方は歯周病に罹患しているパーセンテージが高く、さらに重症化しやすいことなどがわかっています。
もはや歯周病を口臭を引き起こす口腔内だけの病気ととらえるのではなく、全身の健康を考える上でのバロメーターとして考えることが必要となっているのです。
そのためにも、上記の表のステージ1以降の症状を感じる方は、早期のうちに歯科医院での診断・治療(指導)を受けることを心がけましょう。
そうすることが口臭を改善して消すことへの近道であるだけでなく、身体全体の健康を管理するための有効な手段と言えるのです。