「口臭」という言葉を辞書で調べてみると、ある辞書では「口腔内の不潔・歯や口腔内の疾患、もしくは気道・消化器の疾患などから起こる口腔内や呼気の嫌な臭いのこと。」などと解説されています。
しかしながら「口臭」は、虫歯や歯周病に罹患しておらず、内科疾患もなく、耳鼻咽喉科における問題もない、という方でも感じる場合があります。こうした身体的に健康な方にも起きる「口臭」のことを、生理的口臭と呼ぶ場合があります。
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健康な方でも起こりうる「生理的口臭」
一般的な生理的口臭は、大きくわけて
1. 起床直後に起こる口臭
2. 空腹時に起こる口臭 3. 緊張・ストレスなどによって起こる口臭 4. 口腔内の不衛生によって起こる口臭 |
の4種類が考えられます。
1. 起床直後に起こる生理的口臭
起床時に感じられるこの口臭は別名「モーニングブレス」と呼ばれ、誰にでも起こる1日の中で最も強いとされる生理的口臭です。起床後に口腔内にネバネバするような不快感や違和感を感じる方は、それが口臭のもととなっている可能性が考えられます。起床時の口臭が強くなる根本的な原因は口腔内が乾燥することによって口臭菌が増加。そして、これらの口臭菌が口腔内に残留していた食べカスや歯に付着していた歯垢、舌表面に発生する舌苔などのタンパク質を分解する際、口臭の原因となるガス・揮発性硫黄化合物(vsc)が発生しやすくなるためです。
「揮発性硫黄化合物(vsc)」は野菜の腐敗臭のようなメチルメルカプタン(CH3SH)、卵の腐敗臭のような硫化水素(H2S)、ゴミの腐敗臭のようなジメチルサルファイド((CH3)2S)から構成されており、これら3つの要素が混じり合うことによって特有の臭気を発生させ、人々にとって不快なニオイの口臭として認識されるのです。
起床時の口臭においては、揮発性硫黄化合物(vsc)の中でも特に硫化水素(H2S)の濃度が高くなるため、硫黄(卵の腐敗臭)に似た、すえたような不快なニオイがするとされています。
2. 空腹時に起こる生理的口臭
食間などの空腹時に起こる口臭のことです。一般的に、朝食と昼食の中間時の10~12時前後、また昼食と夕食の中間時の15~19時前後に特に口臭が強くなっているのを感じるようであれば、空腹による口臭の可能性が高いと考えられます。
この第一の原因として考えられるのは、やはり唾液の分泌量の減少。そもそも唾液は、「口腔内の細菌を洗い流す」、「細菌の繁殖を抑制する」、「口臭のもととなるニオイを消臭する」などの役割を担っています。このため唾液の分泌量が低下することにより、必然的に唾液が持つ「口腔内を清潔に保つ」という効果も低下。「口臭発生」の原因を招いてしまうのです。
また、第二の原因として考えられるのが、膵液が分解されることによって発生するガスです。膵臓で分泌される消化液「膵液」は、「空腹時により多く分泌される」という特性を持っています。そして空腹時には、胃がこの膵液まで分解することにより、口臭の元となるガスを発生させてしまうのです。
3. 緊張・ストレスなどによって起こる生理的口臭
緊張やストレスなどによって口腔内の唾液の分泌量が減少・低下した時に起こる口臭のことです。人は通常、1日に1~1.5Lもの唾液を分泌していると言われています。しかし、睡眠時のほか、ストレスや緊張が原因で自律神経が乱れることにより、唾液の分泌量が減少・低下する場合があります。
そもそも自律神経には「交感神経」および「副交感神経」という2つの相反する特徴を持つ神経が存在します。具体的には、「交感神経」は身体が活動している時、ストレスを感じている時、緊張している時などに働く神経で、主に日中、優位に働く神経です。また、「副交感神経」はリラックス時、食事中、睡眠中などに働く神経であり、唾液の分泌を促す役割を担っています。
両者のバランスが整っている場合には、身体的にも精神的にも理想的な状態であることが多く、唾液の分泌も正常に行われます。しかし、緊張やストレスを感じて交感神経が優位になると、唾液が十分に分泌されにくくなり、口臭発生の原因につながってしまうのです。
几帳面でストレスをかかえやすい性格の方は、この「緊張やストレスなどによる口臭症」になりやすい傾向にあります。
4. 口腔内の不衛生によって起こる生理的口臭
読んで字のごとく、口腔内の衛生環境が悪化することによって起こる口臭のことです。日々、朝晩の歯磨きにおいてブラッシングの回数が足りなかったり、歯磨きの方法が十分でないことなどにより、歯の隙間の食べカスや歯垢がうまく除去できていないことがあります。この場合、その口腔内に取り残された食べカスや歯垢が腐敗臭などとなって、口臭を引き起こす原因となるのです。
【上記以外に分類される生理的口臭】
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※ただし、これらの生理的口臭は全て一時的なものであり、たとえ放置していてもある一定期間が過ぎ去ると改善されるものとされています。
生理的口臭を改善・消すには……
生理的口臭において、その大きな原因の一つとして考えられるのが口腔内の唾液の分泌量の減少です。このため生理的口臭を抑制し、消すためには唾液の分泌を促すために、以下のような対策をとることが効果的と考えられます。
①水やお茶などを飲むことによってマメな水分補給を心がける。
②朝食を抜かない。 ③よく噛んで食事をする。 ④ガムを噛む。 ⑤意識的に人とコミュニケーションを図る機会を増やすなどして口腔内を活性化する。 ⑥きちんと歯を磨く、うがいをするなどして、口腔内の衛生環境を整える。 |
このように、生理的口臭を引き起こす原因は、普段の食生活における食べ物や嗜好品、また生活リズムの乱れなど、ふとしたところに数多く隠れています。
ですから病気とは言えないまでも、生理的口臭が気になる方は、まずは日々、口にする食べ物や飲み物、嗜好品などに配慮してみましょう。
また同時に、規則正しいリズムで生活することによって生理的口臭を消す、および発生させない努力を心がけることをお勧めします。