何、この口臭、朝食の食べ過ぎが原因?手っ取り早く口臭を消すなら、今日のランチは抜きにすべき?
お昼前のオフィスや自宅でそんなふうに思った経験があるあなた。もしかするとあなたのその「ランチを食べない」という選択肢は、口臭対策としては逆効果かもしれません。
というのも、そもそも口臭が発生する原因には、大きくわけて以下4つのカテゴリーがあります。
1. 生理的な原因による「生理的口臭」 2. 病気が原因による「病的口臭」 3. 食べ物・飲酒・喫煙などによる「外的口臭」 4. 精神不安・ストレスなどによる「心理的口臭」 |
それぞれの詳しい内容については、こちらをご参照ください。
これらの中で、1の生理的口臭とは、朝起きたばかりの時に感じる「起床時口臭」や空腹を感じた時に起こる「飢餓口臭」をはじめ、私たちの身体が本能的・生理的に発生させる口臭のことを指します。
つまり、空腹時に感じる口臭は、誰にでも起こりうる自然な口臭なのです。ではなぜ、空腹時になると「飢餓口臭」が起きてしまうのでしょうか?
コンテンツ
空腹時に飢餓口臭が起こる具体的な原因
1 唾液の分泌量の低下
そもそも口臭は、その一つの原因として唾液が減少することで起こります。なぜなら唾液が減少すると、その環境を好んで繁殖する口腔内の細菌が活性化。そしてそれらの細菌は、たとえきちんと歯を磨いていたとしても、奥歯のうしろや歯と歯のスキ間に残ったわずかな食べカスや、古くなって剥がれ落ちた口の中の粘膜などをエサにして増殖します。その際、それらのエサに含まれるタンパク質を分解して、大量に発生させる揮発性硫黄化合物(vsc)というガスが、口臭のニオイの元になるからです。
中でも、空腹時に感じる飢餓口臭の場合、朝食後あるいは朝食を食べないまま、充分な水分補給をすることなく仕事や家事に集中していたりすると、唾液の分泌量がさらに低下してしまいます。
一方で、唾液はそもそも「口腔内に生息する細菌を洗い流す」、「口腔内における細菌の繁殖を抑制する」、「口臭の原因になるニオイを消臭する」といった役割を担っています。ですから、唾液の分泌量が低下すれば、当然これらの役割が充分に果たされなくなり、それが口臭の発生原因を招くことにもなるのです。
2 膵液が分解されることによって発生するガス
空腹時になると、膵臓から分泌される消化液である「膵液」がより多く分泌されるようになります。さらに、空腹時には胃がこの膵液まで分解してしまい、その際に発生させるガスも口臭の原因になります。
つまり1、2の理由から、空腹時になると「飢餓口臭」と呼ばれる口臭が発生しやすくなるのは当然のことなのです。飢餓口臭は一般的には10~12時前後の朝食・昼食の中間時、あるいは、15~19時前後の昼食・夕食の中間時に起こる可能性が高いと言われています。
だから、お昼前の空腹時に「飢餓口臭」を感じたからといって、ランチを抜くのは逆効果。そんなことをしたら、食べ物や飲み物からの水分補給のチャンスを逃してしまいます。またそうなれば、余計に唾液の分泌量が低下して、口臭が悪化してしまう可能性もあるのです。
なお、起床時や空腹時に感じる生理的口臭については、以下のような研究発表がされています。
生 理 的 口臭 の 日内変 動 に関 す る研 究より抜粋
本研究 で は 日常, 特 に口臭 の認 め られ ない若 い成人を対象 に, 臨床上 の使 用 に小型 で簡 便 なポータブルサル ファイ ドモニ ター を用 い て経 時 的 に 口臭 測 定 を行い, その生理 的口臭 の変動 について検討 した。
日常 は特 に口臭が認 め られ なかった に も関 わらず, 朝食前 で は全員 に何 らかの 口臭が感知 された ことで, 日常 的に他 覚的 口臭 を認 め ない健康 な者で も起床直後 には, 程度 の差 はあれ口臭が発生 す る可能性 が強 い こ とが示 唆 された。ハ リメー ター値, 官能評価値とも朝 食前が1日 の うちで最 も口臭 の程度 が強 く, 他の測 定時 との間に有意差が認 め られた。
また, 食事 に よる影響 を気 にす る者も多いが, 逆 に食後 よ りも空腹 時の方が 口臭 の程度 は有意 に強 く, 飲食 によって減少 して いる ことが示 された。今 回の結果 は飲食 や ブラ ッシ ングに よって 口臭が減少 す る とい う過 去 の報 告を裏付 けた。
後の 口臭 の程度が弱 い こ とか ら, 唾 液量の増 加が食事 の影響 とともに口臭 の減 少 に関わ っている可能性が考 えられ た。
(出典:日本歯科大 学新潟歯学部 歯周治療学教 室
/最終閲覧日:2019年6月19日)
では、そもそも生理的口臭の一つであり、空腹時に感じる「飢餓口臭」を未然に防ぐ方法はないのでしょうか?
以降では、上記の研究結果を踏まえたその方法についてご紹介します。
空腹時の飢餓口臭を防ぐ6つの方法
1 朝食を抜かずにしっかりと食べる
朝食は私たちの身体にとって、1日を始めるための大切なエネルギー源ですが、実は口臭を発生させないようにするためにも実に大切な食事と言えるのです。
その理由は、そもそも睡眠中は唾液の分泌量が低下して、口腔内で口臭の発生原因となる細菌の増殖が起こるから。つまり、起床時は誰もが口臭の発生しやすい状態にあり、「起床時口臭」と呼ばれる口臭が発生するのもこのためなのです。
ですから、このようなタイミングで朝食を抜くということは、食べ物や飲み物によって口腔内に供給されるはずの水分補給がされないばかりか、唾液腺への刺激もされず、唾液の分泌が促進されないことを意味するのです。
つまり、朝食を抜いてしまうと口腔内の環境は起床時以降も乾燥する一方になり、「起床時口臭」よりもさらに強い口臭が発生してしまうリスクすら出てくるのです。
だからこそ、「朝食を食べる」ことは、口臭を抑制するためには必須!また、朝食に限らず、昼食と夕食の中間時に空腹による飢餓口臭を感じた場合は、ちょっとしたおやつなどを口にするのも良いかもしれません。
なお、食事や食べ物を取る際は一口につき30回以上よく噛むなど、意識的に咀嚼回数を増やすようにすると唾液腺への刺激にもなり、唾液の分泌量がアップしますよ。
この他、口臭を抑制する効果が期待できる食べ物や飲み物など、食事や間食の内容にこだわってみるのもいいですね。
2 小まめな水分補給をする
「水分補給」と聞くと、あまりに簡単すぎて、「本当にそれだけで口臭の抑制効果が期待できるの?」と思う方も多いことでしょう。でも、実際、何かしらの水分を口に含むだけで唾液腺の刺激になって、唾液の分泌を促すことができるんです。
また一方で、そもそも唾液の成分のうちの99.5%は水分だと言われています。ですから、いくら唾液腺を刺激したところで、もともと身体の中に唾液成分のもととなる水分が蓄えられていなければ、唾液の分泌はうまくいきません。この点からも、こまめな水分補給が充分な唾液の分泌にとって、いかに大切なものであるかがわかりますよね?
ただし、小まめな水分補給を行う場合は虫歯対策なども考慮し、ミネラルウォーターなど純粋な水(無糖飲料)を飲むのがオススメです。
3 シュガーレスガムや飴を食べる
ガムを噛んだり、飴を舐めることで唾液腺を刺激し、唾液の分泌を促すことができます。
小まめな水分補給によって身体の中に充分な水分量が蓄えられている場合、それ以上の水分補給はむしろ辛い場合もありますよね?そんな時はガムや飴を食べることで唾液腺を刺激して、唾液の分泌を促してあげるのも一つの方法です。
例えばガムなら、ガムそものの味がなくなった後でも、口の中で小さく丸めて舌の上をコロコロと転がすだけでOK。これは口腔内で起こる異物反応によって唾液の分泌量を増進できる、効果的な方法だと言われています。
クチャクチャと噛むのではなく口の中で転がすだけなので、周囲の人にも気付かれにくいはず。パソコンに向かって作業をする時や書類の整理など、人とのコミュニケーションを必要としない時なら、オフィスなどでも簡単に取り組むことができますよね。
4 深呼吸・唾液腺マッサージを行う
仕事など一つのことに集中して取り組んでいたり、何かとストレスの多い時間を過ごしていると、自分でも気づかないうちに「歯を食いしばっている」ことがあります。そして、歯をくいしばると身体や心だけでなく、口腔内までもが緊張状態となってしまいます。
こうなると、自律神経のうちの「交換神経が興奮状態」に陥ってしまい、唾液の分泌量が低下してしまいます。この状態を解消して唾液の分泌を促すには、副交感神経を優位にして口腔内をリラックスさせることが大切です。
それには簡単な方法として、深呼吸がオススメです。ゆっくりと深く息を吸ったり吐いたりする腹式呼吸の深呼吸は、身体の中に充分な酸素を取り入れることができ、心拍数を下げて血圧を安定させるという効果があります。これがリラックス効果へとつながり、唾液の分泌も促してくれるのです。
また、唾液の分泌をより直接的に促したいなら、唾液腺のマサージがオススメ。短時間で簡単にできるので、仕事の合間のちょっとした時間を見つけて、ぜひトライしてみませんか?
この他にも、以下のページで唾液の分泌を促すエクササイズを紹介しています。どれも簡単で、ちょっとしたスキ間時間にできるものばかりです。ぜひ、ご覧になってみてくださいね。
5 うがいをする
うがいには、「口腔内の細菌の除去ができる」という効果のほか、うがいそのものによって「口腔内が潤う」という効果があります。
また、水分を口に含むことで唾液腺を刺激し、唾液の分泌を促すという効果が期待できるうえ、ちょっとしたリラックス時間や気分転換になることもあるでしょう。
仕事や家事などに煮詰まったら「洗面所でうがいをしてみる」というのも、唾液の分泌を促す一つの方法になりますよ。
6 周囲の人と積極的にコミュニケーションを図る
自分の口臭が気になりだすと人と話すのが億劫になり、どうしても必要な時以外、なかなか人とのコミュニケーションを図ろうとしなくなるものですよね?でも実はこれ、口臭の発生を抑制するには逆効果とも言えるのです。
「人とのコミュニケーションを図らない」ということはつまり、「人と話さない。口を動かさない」ということです。口を動かさなければ唾液腺を刺激することができず、唾液の分泌量が低下するため、口臭の発生原因となる口腔内の細菌の増殖につながってしまうのです。
ですから、口臭の発生を抑制したいと思うなら、むしろ積極的に人とのコミュニケーションを図るのがオススメ。コミュニケーションは、周囲の人たちとの円滑な人間関係を築くためだけでなく、口臭を抑制するためにも必要なもののようですね。
最後に
空腹を感じた時に発生しやすい「飢餓口臭」は生理的口臭であり、誰にでも発生する可能性があるものです。けれど飢餓口臭による口臭の発生を抑制したいなら、「食べない」という選択はむしろ逆効果。このページを読んでいただくことで、食事を取らないと水分補給ができないばかりか唾液の分泌が促されず、むしろ口臭の発生源となる口腔内の細菌が増殖してしまうことがおわかりいただけたことと思います。
とはいえ、飢餓口臭を未然に防ぐ方法はさまざまです。ご紹介したとおり、空腹を感じたからといって、ただ食べればいい、ということではありません。
また、食べ過ぎは「外的口臭」など、別の口臭を発生させてしまうリスクもあります。そうならないように気をつけながら、口臭対策を行いましょう。
なお、自分では「飢餓口臭」と思っていた口臭がそうでなかった場合など、飢餓口臭を未然に防ぐ方法を行ってみても、口臭が改善されない場合もあるかもしれません。
実際、口臭が発生する原因は人それぞれ千差万別です。虫歯などを含む口腔内のリスクチェックを行うためにも、歯科医院などでの定期的な検診を受けることを習慣づけ、常に気持ちの良い息で過ごせるように心がけましょう。