口臭の元となる膿栓(のうせん)を知ることは、口臭を改善・消すために大切な知識の一つです。ここでは膿栓(のうせん)について詳しく見ていきましょう。
膿栓は別名「臭い玉(においだま)」とも呼ばれ、喉の奥の両サイドに位置する扁桃腺(へんとうせん)の表面に付着する、乳白色や薄い黄色をした小さなカスのような塊のことを指します。そもそも扁桃腺は、呼吸をすることによって埃(ほこり)や塵(ちり)などと混じって口腔内に入った細菌やウィルスを付着させ、粘り気のある免疫物質である白血球を分泌することでそれらを攻撃。喉を通って身体の中に侵入しようとするのを防いでくれる器官です。そして、この戦いの際に死滅した細菌や白血球の残骸が口腔内に残る食べカスなどとともに固まってできたモノが膿栓なのです。
つまり、膿栓は口腔内のウィスルや細菌を退治するために戦った白血球の死骸に、口の中に残留していた食べカスなどが混じって固まった、いわば膿(うみ)のようなモノ。また、膿栓の中のバクテリアが硫黄化合物を生み出すため、その臭いは下水に例えられるほどの悪臭を放ち、これが口臭の原因となるのです。ちなみに、膿栓の大きさは通常1ミリから、大きなもので5ミリほど。風邪をひいて喉の痛みを感じる時や発熱した際などには多く発生するため、咳やくしゃみなどと一緒に扁桃腺から剥がれて飛び出してきた膿栓を見たことがある方も多いのではないでしょうか?
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膿栓は何故できてしまうのでしょうか?
膿栓が発生する原因は各種さまざま。以下では、その発生原因を「直接的原因」および「間接的原因」にわけてご説明します。
<膿栓が発生する直接的原因>
1. 腺窩(せんか=扁桃腺の表面にある窪み)が大きい場合
膿栓は、扁桃腺の表面にある腺窩と呼ばれる小さな窪みに溜まります。必然的に、この窪みが小さければ溜まりにくく、大きければ溜まりやすい傾向にあるのです。つまり、扁桃腺の先天的な形状の違いによって、膿栓の発生度合いが左右される場合があるということです。
2. 風邪などの細菌やウイルスが原因で起こる扁桃腺の炎症
風邪などの細菌やウイルスに感染すると、扁桃腺は炎症を起こします。そして、その炎症を治癒させるために扁桃腺から分泌された免疫物質である白血球が細菌やウイルスと戦い続けることにより、数多くの細菌の死骸や白血球の残骸が発生。その結果、細菌の死骸や白血球の残骸が口腔内の食べ物のカスなどと結びついて膿栓が大量にでき、唾液によって自然に洗い流すだけでは間に合わず、扁桃腺にとどまる膿栓の量も増えることになるのです。
3. 副鼻腔炎(ふくびくうえん)=ちくのう症や後鼻漏(こうびろう)etc.
副鼻腔炎とは、鼻の穴(鼻腔)の周りにある空洞に細菌やウィスルが侵入することによって炎症を起こし、鼻づまりや鼻汁などの症状を繰り返すもの。また、後鼻漏(こうびろう)とは、鼻汁が鼻の穴から流れ落ちる鼻漏(びろう)に対し、鼻の後ろ側に位置する喉に流れ落ちる症状です。
副鼻腔炎=ちくのう症では副鼻腔に膿が溜まり、それが喉に流れ落ちることによって膿栓ができ、口臭を発生させる原因になります。一方、後鼻漏では、数多くの粘着性の細菌を含む鼻汁が流れ落ちることによって喉に細菌が張り付き、やはり膿栓ができて、それが口臭の原因となるのです。いずれの場合も口臭を改善するためには、それぞれの病気を根本的に治療する必要があります。
4. 季節や気候の変化
先に記述したとおり、膿栓は呼吸によって口腔内に取り込まれた細菌やウィルスと白血球が戦った後の残骸および、食べカスなどが混じってできた塊です。ですから、咽頭の構造や扁桃腺の形状などによってその発生量にこそ差あれ、多かれ少なかれ誰にでも発生するものなのです。ただし、そういった個人差のある先天的な条件とはまた別に、「季節や気候の変化」など、誰にとっても膿栓が発生しやすくなるタイミングがあるのも事実。
中でも冬はその他の季節に比べて空気が乾燥するため塵や埃が立ちやすくなり、それらに付着した細菌やウィルスなどが呼吸を通じて私たちの口腔内に侵入しやすくなる季節。つまり、口腔内に入り込む細菌やウィルスなどの量が増えるため、それを退治するための白血球も増えて、必然的にその戦いの残骸である膿栓の量も多くなるのです。さらに、膿栓の大きさについても、その他の季節に比べて大きめのモノが発生する傾向にあります。
<膿栓が発生する間接的原因>
1. 口呼吸
鼻呼吸の場合は、鼻がフィルターの役割を果たすことにより、口腔内へのウィルスや細菌の侵入を妨げることができます。一方で口呼吸の場合は、数多くのウィルスや細菌が喉にダイレクトに侵入してしまうため、膿栓がたまりやすくなります。
口呼吸は副鼻腔炎や後鼻漏といった鼻の病気、もしくは花粉症や風邪などが原因で鼻づまりの状態となり、正常に鼻呼吸ができない場合に起こりがち。つまり、本人も知らず知らずのうちに口呼吸を引き起こしているケースが意外と多く見受けられます。口呼吸によって口腔内が乾燥し、唾液の分泌量が減少すると、扁桃腺に付着するウィルスや細菌を洗い流すことができなくなり、膿栓が発生しやすくなるのです。
2. ドライマウス
上記のとおり、唾液の分泌量が十分であれば唾液によって自然と扁桃腺を浄化することができるため、ウィルスや細菌が停滞することなく膿栓の発生を防ぐことができます。一方、唾液の分泌量が十分でないドライマウスの場合は、逆に膿栓がたまりやすくなってしまう一因となるのです。
ちなみに、ドライマウスを発症する原因として考えられるものには、以下のようなものが挙げられます。
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上記の中で、ドライマウスになる原因として意外にも多いのが、 5の「服用している薬の副作用」によるものです。これらの例として考えられるいくつかの薬には、「降圧剤」「睡眠誘導剤」「安定剤」などがあります。これらの薬には、唾液の分泌量を減少させてしまう作用があるものが多いのです。
さらに、これらの薬の副作用が原因でドライマウスになっている場合には、「舌苔」もできやすくなるのが特徴的と言えます。
皆さんの中には、ご自身のことを膿栓(臭い玉)ができやすい体質だと思っている方がいらっしゃるかもしれません。しかし、実は体質そのものが問題なのではなく、何らかの疾患を治療するために服用している薬が間接的な原因となって「口呼吸」や「ドライマウス」を引き起こしていることこそが、膿栓を発生しやすくする大きな原因となっている可能性があるということです。
また、一度膿栓ができてしまうと、その膿栓自体に菌が繁殖することにより「膿栓が膿栓を呼ぶ」という、負のスパイラルを生んでしまうこともあります。この場合、「口呼吸」や「ドライマウス」によって唾液の分泌量が低下し、健康な人であれば唾液によって自然と胃に洗い流すことができる膿栓を洗い流すことができなくなることが、何より大きな問題であると言えるのです。
ですから、もし何らかの薬を服薬中で膿栓が気になる場合には、そのお薬を処方しているかかりつけの医師にご相談いただくことをオススメします。
なお、膿栓を予防・改善する方法などについては、以下ページをご参照ください。