口臭を改善・消臭したいと思っても、その原因が今ひとつはっきりしない。虫歯や歯周病など、一般的な口臭の原因とされる口腔内のトラブルにも思い当たる節はない。そんな方の口臭の原因は、もしかすると意外にも「親知らず」にあるかもしれません。
そこでこのページでは、親知らずが口臭を発生させる理由とその対処法、また、親知らずを抜歯した後に起こる口臭の原因とその対処法についてご説明していきましょう。
口臭はそもそもが、自分ではなかなか気づきにくいものですよね?そんな中、「親知らずが原因の口臭」は、虫歯や歯周病などが原因の口臭に比べて耳にする機会も少なく、より気づきにくいものとも言えるでしょう。
自らの口臭が、期せずして周囲の人たちに不快感を与えるスメルハラスメントになってしまわないうちに、早めの原因究明と対策を施して、1日も早く爽やかな息と快適な生活を取り戻しましょう。
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なぜ親知らずは口臭の原因になってしまうのか?
「親知らず」とは、皆さんご存知のとおり、上下ともに歯列の一番奥に生えてくる歯のことです。ただし、特に顎が小さい方などの場合は、親知らずがまっすぐに生えてこられるだけのスペースがなく、曲がって生えてきてしまうことがよくあります。
そうなると、「口腔内において、歯ブラシが届きにくい咽頭に近いあたりに生えている」という、そもそもが不利な条件に加えて、「親知らずそのものが曲がって生えている」というさらなる悪条件が重なり、余計にうまく歯磨きをすることが難しくなってしまうのです。
そのせいで、親知らずの周辺は食べ物のカスや歯垢(プラーク)がたまりやすくなり、虫歯や歯周病も発症しやすくなる傾向にある、と言えるのです。
このようなことを背景に、親知らずが口臭の原因となる具体的な例として、以下5つのことが考えられます。
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1 親知らずや親知らずの周辺が不潔な状態になっている
先にも触れたとおり、上下ともに歯列の一番奥に位置する親知らずは、もともと歯磨きがしづらい場所にあります。それに加えて、親知らずがまっすぐに生えていない場合には、余計に隅々まで歯ブラシが届きにくくなるため、磨き残しが出やすくなってしまいます。
食べ物やヨゴレの磨き残しが出れば、それ自体が腐敗して腐敗臭を放つため、口臭の原因となります。また、もともと口腔内に生息している細菌がそれら磨き残しをエサに繁殖しやすくなり、その繁殖の際に嫌なニオイのガスを放出するため、それもまた口臭の原因となってしまうのです。
2 親知らずが虫歯に罹患している
1でも触れたように、親知らずは上下ともに歯列の一番奥に位置しているためもともと歯磨きがしづらく、よくよく注意して歯磨きをしないと、どうしてもヨゴレや食べカスをうまく取り除ききれないのが実情です。このため、その他の歯に比べて、虫歯に罹患するリスクも高くなってしまうのです。
虫歯に罹患すると、その虫歯の穴に食べカスやヨゴレが溜まり、それが発酵して口臭の原因となる嫌なニオイを放つことがあります。また、虫歯が進行して神経まで侵され、腐敗してしまうと強烈なニオイを放つため、それが口臭の原因となる場合もあります。
3 親知らず周辺が化膿している
ただでさえ歯ブラシがとどきにくい位置にある親知らずには、どうしても食べカスやヨゴレがたまりやすいものです。特に、親知らずが曲がって生えている場合には、その一部が歯茎に埋まったままだったり、歯茎のほとんどが歯の上に覆い被さったままの状態だったりします。
すると、親知らずと歯茎の隙間に食べカスやヨゴレが溜まりやすくなり、これが発酵したままの状態で放置されると歯茎が炎症を起こし、痛みと同時にニオイのきつい「膿(うみ)」を放出。この場合は、口臭も相当キツイものになると言われています。
4 親知らずに接触している歯が虫歯に罹患している
親知らずが不潔な状態で放置されれば、親知らずそのものだけでなく、親知らずに接触している歯も虫歯に罹患しやすくなります。特に親知らずが真横に生えていたり、斜めに生えていたりする場合にはその手前にある歯の根を吸収することもあり、これが手前の歯の虫歯の進行を助長することもあるのです。虫歯に罹患すると口臭が発生しやすくなるメカニズムは、2の「親知らずが虫歯に罹患している」の場合と同じ原理です。
5 親知らずが歯周病に罹患している
うまく歯ブラシを扱うことができず、期せずして清掃の行きとどかない不潔な状態のままに親知らずが放置されると、歯垢が歯石となって、虫歯だけでなく歯周病にも罹患しやすくなります。
こうして歯周病などが原因で「親知らずの周辺に起こる炎症」のことを、智歯周囲炎と呼びます。また、この智歯周囲炎を放っておくと、痛みと同時に口腔内の細菌が増殖し、増殖時に発生させる悪臭や悪臭の元となる膿を発生させることにつながってしまうのです。
短期間で効果が出やすい、親知らずがもとで起こる口臭への対策
では、どのようにすれば親知らずがもとで発生する口臭を改善・消臭することができるのでしょうか?まずは、短期間で効果が出やすい方法について考えてみましょう。
1 ワンタフトブラシを用いて、丁寧に親知らずの歯磨きを行う
前述のとおり、「口腔内の奥に位置するもともと磨きにくい場所に、曲がって生えていることが多い」などの理由から、どうしても親知らずにはプラーク(歯垢)が残りやすくなります。ですから、口臭の改善・消臭を行うには、まずは口臭の原因となるプラークを残さないようにすることが先決です。そのためには、その他の歯にも増して、よりいっそう丁寧な歯磨きを行うように注意することが大切です。
そのためにも歯を磨く際には、鏡に映すなどして自らの親知らずの生え方をきちんと把握したうえで、隅々まで歯ブラシが行き届くように効果的なブラッシング方法で行いましょう。また、通常の歯ブラシだけでなく、奥歯や歯と歯のあいだの狭いスキ間のヨゴレ落としに便利な、ヘッドの小さな「ワンタフトブラシ」を併用しましょう(写真参照)。さらに、歯間ブラシやデンタルフロスなども使用すれば、より効果的に歯垢やヨゴレを除去することができ、口臭の改善・予防につなげることができるはずです。
2 マウスウォッシュを活用して、口腔内を清潔に保つ
歯を磨く際には、「通常の歯ブラシ」「ワンタフト歯ブラシ」「歯間ブラシもしくはデンタルフロス」の3点セットを併用して丁寧に行うことが大切です。
また、これら3点セットを用いて歯磨きを行った後に、マウスウォッシュでのうがいを行うことで、口腔内の細菌の繁殖を抑えることが可能になります。
そもそも親知らずがもとで発生する口臭は、口腔内に生息する細菌が繁殖する際に放出する嫌なニオイのガスが原因です。ですから、マウスウォッシュを使用したうがいで、親知らずに付着する虫歯菌や歯周病菌を抑制することにより、口臭の改善・予防につなげることができるのです。
3 虫歯の治療を行う
親知らずそのものや、親知らずに接触している歯が虫歯に罹患している場合には、それらの虫歯を治療するのが最も端的に口臭を改善・予防する方法です。
ちょっとした切り傷やすり傷、また軽い症状の風邪など、さほど心配する必要のない体調不良であれば、自然治癒することも多々あるでしょう。
しかし、虫歯を放置した場合には、よほど初期のものでない限り、自然治癒することはまずありません。少しでも虫歯の症状を感じたら、できるだけ早めに歯科医での受診・相談を行いましょう。また、虫歯や歯周病の予防という観点からも、定期的な歯科検診を受けることをオススメします。
親知らずによる口臭を改善・予防する生活習慣
ここでは親知らずが原因で発生する口臭を改善・予防するために、ぜひ取り入れたい生活習慣についてご説明します。
1 唾液の分泌を促すための工夫を行う
唾液に含まれる成分には、抗菌・殺菌作用により口腔内の細菌が活性化するのを抑制する働きがあります。また、唾液には口臭を発生させる原因となる細菌のエサとなる、口腔内に残った食べカスや古くなって剥がれ落ちた口腔内の粘膜などを洗い流してくれる「自浄作用」も期待できます。ですから、唾液の分泌量をアップすることは、口臭を改善・消臭・予防するうえで実に有益なことなのです。
唾液の分泌量をアップさせる方法には、レモンや梅干しなど酸味を多く含むものを食べる、シュガーレスガムを食べる、あるいは唾液の分泌をつかさどる唾液腺をマッサージするなど、さまざまな方法が考えられます。
また、食事の際に「一口につき、30回以上を目安によく噛んで食べる」など、ちょっとした配慮をするだけでも効果が見込めます。
唾液の分泌量を促す方法については、下記のページをご参照ください。
2 規則正しい生活を心がけて、免疫力を向上させる
疲れていたりストレスを抱えていると、口腔内を含む身体全体の免疫力が低下してしまいます。そして、免疫力が低下すれば細菌に対する抵抗力も低下してしまうため、虫歯菌や歯周病菌をはじめとする口臭の原因となる細菌が繁殖しやすくなってしまうのです。
これを避けるためには、日々の生活習慣に気遣い、極力ストレスや疲れを溜め込まずに快適な生活を送ることが大切です。仕事や家事などに忙しい中でもできるだけ睡眠時間を確保したり、軽い運動を行うなど、身体に負担をかけないように健全な生活を送ることを心がけましょう。
また、時間がある時や休日には自分の好きなことをして過ごすなど、心と身体を開放してあげることによって可能な限りストレスフリーな生活を送り、免疫力のアップを図りましょう。
親知らずを抜歯して、根本的な解決を図る
親知らずの虫歯や歯周病が原因で口臭が発生している場合には、言うまでもなく歯科医院でそれぞれの症状に対する治療を行うことが重要です。そして、その根本的かつ、最も確実な解決方法の一つとして考えられるのが、親知らずの抜歯です。
実際、親知らずの虫歯による痛みなど、親知らずに何らかの問題が生じた場合は、抜歯を提案する歯科医院が非常に多いのが現状です。私の場合、左奥下の親知らずに虫歯による痛みを感じ、以前働いていた歯科医院で受診を受けた際には、薬によってその親知らずの腫れや痛みなどの症状を沈静化させた後に抜歯。さらに、まだ歯肉の下にあって生えてきていない残り3本の親知らずについても抜歯を勧められ、その後、2回に分けて抜歯したという経験があります。
つまり、親知らずはそれだけ、トラブルの元となるリスクが高い歯だということなのです。ただし、もちろん抜歯をせずに残せる親知らずもありますから、まずは歯科医師に相談してみることをオススメします。
抜歯後の親知らずが原因で起こる口臭について
親知らずの抜歯を行うことで口臭の発生源を取り除いたにもかかわらず、なお口臭が発生する場合があります。そのような場合には、以下4つの原因が考えられます。
1 抜歯後にできた穴に、食べカスやヨゴレなどが残っている
親知らずを抜歯した後しばらくの間は、親知らずが生えていた場所に舌先で触ってもわかるような大きな穴が空いている状態が続きます。そして、この穴に食べカスなどのヨゴレが入り込んだまま腐敗してしまうと、それが口臭のもととなってしまう場合があります。
ただし、抜歯したばかりの患部(穴)を歯ブラシでゴシゴシと磨くことは言語道断です。患部に入り込んでしまったヨゴレや食べカスを取り除くためには、「水」でやさしく口をゆすぐ程度に収め、1日も早く患部が癒えるよう刺激しないでおきましょう。
2 治癒過程にある患部が臭う
抜歯直後の患部はその傷口に血が溜まることになります。そして、この血が膿となってニオイを発生させる場合があります。ただし、これは患部の傷が癒えていくうえで必要な過程です。約1週間ほどで治るものなので、少しの間の辛抱と捉えましょう。
3 抜歯後の患部を縫合した糸が臭う
親知らずの抜歯後の穴が大きい場合には、その傷口を糸で縫合することがあります。ただし、その縫合後の患部を直接歯ブラシで磨くことはできないため、この縫合糸に食べカスなどのヨゴレが付着してニオイを発する場合があるのです。これも約1週間ほどで治るものなので、少しの間、グッと我慢です。
4 傷口が細菌に感染した場合に起こる臭い
親知らずを抜歯した後の患部は、常に唾液が分泌されている口腔内という場所であるため、絆創膏などによって患部を保護することができません。このため、細菌に感染しやすいというリスクがあるのです。また、この細菌によって、口臭の原因となるニオイが発生する場合があります。
これを避けるために、歯科医院では痛み止めとともに化膿止めを処方することが通例です。ただし、発熱や時間が経過してから患部の腫れなどが見られる場合には細菌感染を疑い、直ちに歯科医院を受診しましょう。
抜歯後の親知らずが原因で起こる口臭への対策
ここでは、親知らずを抜歯したことが原因で起こる口臭への対策と、その口臭が起こる可能性がある期間などについてご説明します。
ただし、この期間における口臭はやむをえないものなので、できるだけ外出の機会を減らすなどしてやり過ごすことも、口臭対策としての一つの工夫と言えるでしょう。
1 抜歯後の親知らずが原因で口臭が発生する期間
親知らずの抜歯後の臭いは、抜歯後の患部が癒え切っていないことによって発生するのもです。ですから、その傷口が完全に癒える1~2ヵ月後には自然と治まるものと言えます。
この間に気をつけたいのは、患部を刺激しないように気を配ると同時に、そればかりに気を取られてその他の歯の歯磨きなどがおざなりになることで、虫歯などに罹患しないように注意することです。
2 マウスウォッシュなどによるうがいやブラッシングなどは避ける
親知らずの抜歯後の口臭が気になると、つい抜歯後の患部をマウスウォッシュでうがいして除菌したり、他の歯と同じように磨きたくなるかもしれません。
しかし、そうすることは患部を刺激してしまうため逆効果となり、かえって患部の治癒を遅れさせる原因となってしまいます。患部をブラッシングすることは極力避け、口をゆすぐ場合は必ず「水で優しく」行いましょう。
できるだけ患部を刺激せずに、唾液が持つ免疫力で自然治癒するのを待つことが大切です。
3 歯科医院で口腔内のクリーニングをする
それでも、どうしても口臭が気になるという場合は、歯科医師に相談し、状況と必要に応じて口腔内のクリーニングを行いましょう。そうすることで、ニオイだけでなく、気持ちもリフレッシュできるかもしれません。
ただし、患部の状況によっては、クリーニンングができない場合もあります。それでも、患部の治癒状態が確認できると同時に、もし何かあれば確実に対処をしてもらえるはずです。歯科医師によるプロの判断に任せましょう。
最後に
親知らずはその生える場所や生え方により歯ブラシが届きにくく、どうしても食べカスやヨゴレがたまりやすいため、虫歯や歯周病などに罹患しやすいものです。このため、口臭を発生させる原因の一つにもなり得るのです。
これを避けるためには、通常の歯ブラシ以外にも「ワンタフト歯ブラシ」を利用して歯を磨いたり、歯間ブラシやデンタルフロス、またマウスウォッシュによるうがいを行うなど、しっかりとしたオーラルケアに取り組むことを心がけましょう。
それでも親知らずが虫歯や歯周病に罹患してしまった場合には、早急に歯科医院を受診し、歯科医と相談のうえで抜歯も含めた治療および対処を行いましょう。
抜歯後にも口臭が発生する可能性がありますが、それは患部が治癒するまでの一過性のものにすぎません。そもそも親しらずがもとで発生する口臭については、その段階に応じて対策が異なります。このページを参考に、歯科医との相談も含めて口臭対策を行っていただけると幸いです。